平安寿子著「こっちへお入り」
はっきりもすっきりもしない、いまいちな三十路の独身中堅OLの江利が、ひょんなことから素人落語教室に通いだすことに。
すると。
気付かないうちに、ハマるハマる。 見事なくらい。
「秋風亭子よし」と名乗り、目指せ発表会。
おっと。 ただいまわたしは、上野広小路亭の前で、信号待ちをしているところである。
青に変わった。 さあ進もう。
落語の入門編である「寿毛無」をなんとかやりきり、向上心に火がつく。
次のネタを早く習いたい。 すっかりそれまでのうやむやな気持ちはどこへやら。
わたしも鈴本演芸場をすっかり通り越してしまっていた。
先生である楽笑は、本職はサラリーマン。 しかし、侮れない。
二足のわらじだからこそ、できることがある。
有名な話、咄家が、もちろん折々に出てくる。
やはり出てきた。
桂枝雀
ちょいと機会があって知っていたわたしは、扇子でピシリとおでこをはたきたい気持ちになる。
おっと、いただいた立派な京扇子は、そんなことに使わないのでご安心いただきたい。
さて。
そんなこんなで、色々な話の登場人物の人情や心情を想像したり気付かされたり、落語とは人生勉強である。
登場人物のそれぞれの心情を理解しなくては、とてもじゃないが話すことなどできない。
逆に言えば、話のなかに様々な文化や時代や男や女や、学ぶこと知ること考えることが、ちりばめられているのである。
しかも、同じ話のはずなのに、咄家によって印象やメッセージが、違ってくる。
悲恋の涙の物語で、というのもあれば、それを、あっけらかん、と吹き飛ばして痛快な物語で結ぶ、というなど。
とにかく、これはぜひ、落語に触れてみたいと思ってしまう。
「こっちへお入り」
はいはい、ちょいと失礼させていただきます。
と。
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