「あれぇ、明日からはまぐりさんとかみんな、休みですよ」
え、またまたぁ。
「ほんとですって」
なぎさくんが、うちらも休んじゃいましょっか、と朗らかに答える。
休んで困るのは、わたしたち自身である。
明日は、世間でいう仕事納めであるが、わたしたちの仕事は、まったく納まってないのだから納めようがない。
しかも、明日は村木さんの送別会を納会も兼ねてやるのである。
村木さんは棟梁のような角刈り頭で、眼鏡にギョロリ目。 しかし、まったく正反対のやさしい笑かしてもくれる方である。
エヴァのカヲルのイラストが書いてある空のティッシュ箱を、知らないうちにわたしのデスクに置いて、
「そっか、そんなオタク趣味だったのかぁ」
ウッヒャヒャヒャ、と指差し笑う。
「歌はいいねぇ、リリンが作りし文化の極みだよ……ですか」 「俺はそこまで知らないから。第九なんて歌いださないでよ」
知ってるやないのん。
そはさておき。
すっかり、目の前にそびえる山々を尻目に、ついついスワンボートで戯れてみたい気持ちになるのは人の性である。
あはは、牛子さぁーん。 うふふ、馬男さぁーん。
ルーミック・ワールドに逃避してしまう。
なにせ、緊急ミーティング、を半ば無理やり開いてもらった直後である。
「ええっ、そんな事態なのっ」
いったい誰が、状況をせき止めていたのだろうか。 いってもせんないことである。
その緊急に、わがせいではござらん然と腰掛けていた方は、明日からしっかりお休みをとられている。
えいくそ、コーラック。 くわえて、ケツメイシ。 のち、ボラギノール。
のほほん、は変わらず。
竹林に逃避したい気持ちをぐっと抑え、せめて机上の竹林で我慢する。
閉店間近の半額値になった焼き鳥の竹串である。 近所でこうもたやすく竹林の山を購入・造成できるとは侮れぬ、根の津の地。
竹林にて清談にふけるのがもっともだが、哀しいかな、談ずる相手がいない。 相手がいなければ、はじめは清談のつもりでも次第に猥談へと猛進してしまう危険がある。
しかし、ひとりきりでする猥談ほどカナチイものはない。 シクラメンもガックシうなだれてしまうほどである。
猥談を早々に切り上げ、雑談に妄想を切り換える。
竹林の向こうにはどうしても、静まり返った社内でカチカチとパソコンに向かっているわたしらの姿がチラつく。
チラつくならばそれはせめて、白いワンピースの裾であって欲しいものである。
ほら、つかまえてごらんなさーい。 ようし、こら待てーぃ……。
虚しくも過ぎゆく時間を、まだまだ追い掛けてゆくのである。
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