「隙 間」

2010年11月30日(火) 「田村はまだか」

朝倉かすみ著「田村はまだか」

吉川英治文学新人賞受賞作である。

わたしは、少し大袈裟だが、自分を褒めてやりたい。

でかした!
よくぞ、朝倉かすみをその手で選び、出会ってくれた!

「肝、焼ける」で、おやおやなんだか無性に臓腑があったかくなっているぞ、と変調を覚え、題が「肝」なだけにそのせいだろうと。

「そんなはずはない」で、いやいやいや、まさかまさか、そう、そうに違いない、そんなはずはない、と。

そして気づけば手に取り、読みながら腹の内で作中に合わせて共に口にしている。

「田村はまだか!」

マスターがひとりで経営しているススキノのスナック「チャオ」に、五人の男女が集まっていた。

同窓会の三次会で、「田村」なる同級生だった男を待っている。

それぞれがそれぞれの人生を歩み、もうそこそこという四十代の彼らが、田村を待ちながら、語り合う。

連作短編形式で、何よりもすべてが、小気味いい。

小気味いいまま、気持ちがよいほどに、ストンと涙の泉に落とされそうにも、なる。

果たして田村はやってくるのか?

来る。
きっとやってくる。

読みながら、彼らと一緒に、田村を待とう。

夜は長く。
そして、あっという間である。

……。

田村はまだかっ!


 < 過去  INDEX  未来 >


竹 [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加