朝倉かすみ著「田村はまだか」
吉川英治文学新人賞受賞作である。
わたしは、少し大袈裟だが、自分を褒めてやりたい。
でかした! よくぞ、朝倉かすみをその手で選び、出会ってくれた!
「肝、焼ける」で、おやおやなんだか無性に臓腑があったかくなっているぞ、と変調を覚え、題が「肝」なだけにそのせいだろうと。
「そんなはずはない」で、いやいやいや、まさかまさか、そう、そうに違いない、そんなはずはない、と。
そして気づけば手に取り、読みながら腹の内で作中に合わせて共に口にしている。
「田村はまだか!」
マスターがひとりで経営しているススキノのスナック「チャオ」に、五人の男女が集まっていた。
同窓会の三次会で、「田村」なる同級生だった男を待っている。
それぞれがそれぞれの人生を歩み、もうそこそこという四十代の彼らが、田村を待ちながら、語り合う。
連作短編形式で、何よりもすべてが、小気味いい。
小気味いいまま、気持ちがよいほどに、ストンと涙の泉に落とされそうにも、なる。
果たして田村はやってくるのか?
来る。 きっとやってくる。
読みながら、彼らと一緒に、田村を待とう。
夜は長く。 そして、あっという間である。
……。
田村はまだかっ!
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