| 2010年11月28日(日) |
「優しい嘘と贈り物」 |
「優しい嘘と贈り物」
をギンレイにて。
ロバートはスーパーに勤め、ひとりで暮らしている高齢者。 そんなとき、メアリーという老婦人と出会い、一目で恋に落ちてしまう。
スーパーの若き店長マイクに、
「デートはどうしたらいい?」 「どんなプレゼントがいいだろうか?」
次々と相談し、メアリーとの仲を確かなものにしようと、そして今までの孤独で寂しくて、無駄だと思っていた人生とは比べものにならない薔薇色の日々を送りはじめる。
マイクが、いい。
なんとあたたかい若者だろう。
よし、フレンチの店は予約しておいた。 支払いもカードだから安心してくれ。
彼女とデートするために一日仕事を休ませてくれだって? 気にするな、もちろん休んでいいさ。彼女とのデートを楽しんでくれ。
ヨボヨボの冴えない爺さんに、なんとあたたかいのだろう。
ロバートとメアリーの仲は順調に進んでゆき、メアリーの娘とマイクも一緒に過ごすようにもなり、やがてロバートは、メアリーにプロポーズをしようと決意する。
そんな矢先。
ロバートが目を覚ますと、メアリーの姿がない。
パニックになるロバート。 家中探しても見つからず、彼女に電話しようとする。 しかし番号がわからない。 寝室のサイドテーブルに番号のメモが「いつも」貼ってあったが、それすら思いつかず、電話帳で番号を探そうとする。
彼女の名字を知らない。
手当たり次第にかけまくり、彼女をだしてくれ、彼女と話したいんだ、とさらにボロボロに壊れてゆく。
「ただいま」
メアリーが帰ってくる。
何日もどこに行っていたんだ。 今朝用事があるからとお別れしたじゃない。たった数時間前よ。 もう二度と離れないでくれ。
強く抱き締めるロバートの肩越しにメアリーは、
離れてゆこうとしてるのは、あなたなのに。
しかし混乱していたロバートは、騒ぎを聞きつけて出てきたマイクたちを振り払い、向かいの、彼らのメアリーの家に逃げ込みドアに鍵を掛けてしまう。
ロバートが見たものは、家族の写真。
自分とメアリーと、マイクたちが一緒に並んでいる。 スーパーのオーナーに自分の名前が書いてある。
「わたしたちは家族なのよっ」
メアリーがドアの向こうから叫んでいた。
アルツハイマーだかわからないが、ロバートは記憶がなくなってしまっていたのである。 作中、淡々と朝食をとり薬を飲み、としていた毎日の支度を、実は毎日こっそりメアリーがしていたのである。
場面転換でおそらくシナプスを模した画像が使われており、それを暗に示している。
ロバートとの日々を取り戻そうとするメアリーに、娘は最初反対だった。
お母さんが傷つくのが心配なの。 大丈夫。それでもやりたいの。
さて。
大袈裟にとられては困ってしまうが、わたしにはロバートのような気持ちが、体験としてわかる。
なんせ、記憶を整理しているだろう睡眠に、問題がある身である。
自分がやった仕事を、たまにすぐ思い出せない。 なにかきっかけをたどってゆくとやっとその記憶を引っ張りだすことに成功する。
自分がやったことに、自信が持てないのである。
ああ、たしかにやった、かもしれない。いや、やった。やってある。 うむ、やった。
そんな事態を避けるために、毎日毎晩をきちんと、ひとと同じようにとまでは望まないが、それに近い睡眠がとれることを祈るしかないのである。
そんな危うい記憶だからこそ。 その記憶に日々を任せたい。
全てを文字や記録で残したとて、それだけでは記憶には遠く及ばない。 誰かが残したものとさして変わらないからだ。
しかし。
記憶を呼び出すためにそれらが役立つこともまた、否めない。
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