「オーケストラ!」
をギンレイにて。
かつて天才マエストロとしてロシアのボリショイ・オーケストラを率いていたアンドレは、思想的反抗から首になり、今は劇場の清掃員。
偶然劇場に送られてきた公演依頼のFAXを目にし、かつての仲間たちを集め、なりすましてパリへと向かう。
三十年ぶりの仲間たちは、ジプシーやタクシー運転手、AVの吹き替え声優や蚤の市の業者やら、とかくはちゃめちゃなのである。
ソリストに迎えたアンヌ=マリーとアンドレと楽団員らの関係は如何に?
コンサートは無事成功となるのか?
フランスでマイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」を差し置いて一位になった作品らしい。
映画だからご都合主義なのはわかる。
んなアホな、というのは随所にあり、笑いを誘っている。 ついでに、感動の涙まで、つけてくれたりもする。
クラシックの音楽なんて、「のだめカンタービレ」で久しぶりに耳にしたくらいの素人である。 モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキー、シューベルト、シュリーマン。
いや最後のは違った。
ドヴォルザークにシャア専用ザク。 ドビュッシーに名犬ラッシー。
これでは母が草葉の陰で嘆く姿が目に浮かぶ。 ついでに実家のピアノが♭な音で泣いていることだろう。
名誉のためにいっておく。
わたしはまともにピアノに触れたことはない。
それなのに、ラストの演奏で、わけもわからず、涙がにじみ出していた。
音楽は、不思議だ。
観てみて損はない作品であった。
さて。
ようやく肩のかせが外れてくれたわたしは、昨夜帰りがけに電話が鳴ったのである。
御徒町で帰宅前のコーヒータイム、いや束の間のひとときを過ごしていたのである。
「ちょうど近くにきたもので」
黒猫の運転手さんであった。
午前中に不在連絡メールがきていたので、再配達の連絡をしなければとは思っていたのである。
何時ごろになら伺えるかと。 何時ですか。すぐに帰ります。
急いで店を出る。 いつもは徒歩で二十分の道のりを、湯島の駅から地下鉄でひと駅、早くてじっぷんほど短縮できるのである。
そうして手にした品。
「RENT -ORIGINAL BLOADWAY CAST RECORDING」
ブロードウェイ・キャストによる二枚組のアルバムである。
映画版ならば、毎日仕事中以外の時間に、常に聴いているものがある。
しかしこちらは、ブロードウェイの舞台で歌われていたほぼ全ての曲が、収録されているのである。
RENTはミュージカルである。 つまり、映像がないだけで、その舞台を聴くことができてしまうのである。
映画版では収録されていない曲ばかりではなく、カットされているシーンの曲も勿論収められている。
「YOU OKAY HONEY?」や、 「ANOTHER DAY」や、 「GOODBYE LOVE」や、 「HALLOWEEN」や。
なぜ今まで、これを忘れていたのだろう。
早速、携帯プレーヤーに入れる。
「Speek...」
MARKとROGERがわたしの耳元で声を揃える。
これはヤバい。
ボロボロと殻が剥がれ落ちてしまう。
顔はニヤけるわグジュグジュするわ、足はブルブルするわ。
改めて思う。
「RENT」は特別である。
You will see?
指差す先に、何を見る。
|