「隙 間」

2010年09月10日(金) 「爆心」と物語る勇気

青来有一著「爆心」

芥川賞作家であり、本作で谷崎潤一郎賞を受賞している長崎出身在住の作家である。

「爆心地小説」というのらしい。

つまり原爆の、被爆した地に暮らす、生きる人々の物語。

とはいえ。
本作は長崎というキリシタンの歴史を持つ側面を、頭に引っ掛けた夏祭りのお面のように、配してある。

連作短編のかたちをとった、ひとつひとつが独立した物語である。

さて。
なかなか感想が難しい。

だから、何?

と言ってしまうのが、本音なのかもしれない。
しかし、どこかそれだけではないような気もする。

被爆の物語ではない。
キリシタン弾圧の歴史がつまびく悲劇物語でもない。

ただその地に暮らす人々の、街の、生と死と命の、どこの街でも繰り返される出来事、なのである。

そこに染み付いた、引き継がれてきた、物語。

被爆したわけでもない。
弾圧されたわけでもない。

だから、それに触れるには勇気がいる。

しかし、小説をうそ話としての書き手として、勇気をもってうそを書かねばならない。

うそでも、ときにはわたしは子どもを持つ親になり、また子ども自身になり、小遣いをせびられる祖父母となり、生を謳歌するものになり、死を目前としたものとなり、恋を夢中で追い掛けるものになり、また夢にうつつをぬかすものになり。

しかしそれは決して現実ではない。

だからこそ、書けるのかもしれない。勇気を意識したことはないが。


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