「隙 間」

2010年08月13日(金) 特別阿房列車・番外編〜五日目・終着

わたしの「特別阿房列車・番外編」もついに最終日である。

宿の帳場で、大荷物を宅配便にて送るよう手配し、肩掛け鞄ひとつと身軽になる。

午後からまた大西さんが、清水寺を案内してくれるというので、すっかりおまかせすることにしていたのである。

しかし午前は、土佐からの龍馬繋がりで、とある稲荷にゆきたく思っていたのである。

そこは龍馬が、自分は無事に生きている、との安否をお龍に伝えるため「龍」の字を幹に彫り込んだ木がある、という縁のある稲荷なのである。

昼食を大西さんとさらに小西さんも一緒にとることとなっており、いざお店に。

こちらのシェフは、なんと大西さんの同級生であり、この街にて偶然の再会を果たしたらしい。

隠れ家のフレンチといった風情である。

ここでも大西さんの顔の広さ、縁を大切にするその素晴らしさを目の当たりにする。

隣やらあちらやらこちらやら、お知り合いの方々が見えられているとのことで、ご挨拶に顔を出しに回られる。

京扇子屋のお上さんである。
であるのに、気取らず飾らず塀を立てず。

昼食にて小西さんとは別れ、またまたわたしに気を遣っていただきご近所の馴染みの喫茶店へと。

俳優・香川照之似の店員さんが、また気持ちよい。

そう。
このような店こそが街に必要な喫茶店であり、カフェばかりになりつつある現在、とてもありがたい店である。

さあ。
いざ清水寺である。
正しくは、地主神社、である。

東の京でかけてかなわぬならば、京の都にてかけてそうろう。

まったくの「神頼み」頼みである。
この地主様は、有名な石がある。ひとりでは見えない結界にて弾かれていただろうものである。

氏子(清水寺)である大西さんの案内によって、わたしは初めて訪れるを許されたのである。

向こうに無事辿り着けたかどうかはご想像にお任せするとして、さあおみくじである。

結果は。

縁結びといえば、大黒(国)様である。
さかのぼれば数年前、出雲大社でおうかがいをたてたときから、氏子である神田神社と。

ひいてきたおみくじ多数。

託されたお言葉は皆似たようなものばかりであった。

ひとに頼め。やがてはかなう。遅いがかなう。焦らず待て。

お達しのとおり、じっと膝を抱えて、自ら足掻かず待ち続けているのであった。
やはり、まだ待つべし、とのことである。
どこへいっても、度重なって同じようなことをいわれ続けていると、妙に信憑性が増してくるものである。

大西さんのお宅にお邪魔したとき、旦那様の大東さん、そして旦那様のお母様の大大東さんが、快くわたしを迎えていただき、まことに感謝である。

大大東さんには、お盆や正月の伝統的な習わしや、かつて一度東京に訪れたときの、おそらくわたしの敬愛する内田百ケン先生がまだご存命中のころの言問いだとかの話をお話しいただいて、ありがたいやら楽しいやら嬉しいやら。
大大東さんはなんとも可愛らしいお母様であった。

ところで、ここでの名前はわたしが勝手に大だの小だの東だの西だのとつけさせていただいているが、この名だけは真実である。

京扇子製造卸の
「大西常商店」

川原町通りの京町屋の佇まい。
茶室と共待ち。

建築は、写真やディテールだけではない。
そこにある空気と光と影とを、まずは肌で感じることこそが重要である。

さて。

なんやかんやとご家族ご近所お馴染みさんぐるみで歓待していただいてしまったわたしである。

お礼にいつでも、東京にいらした際はご案内等させていただき、及ばずながら恩返しをさせていただきたいところである。

我が家にお泊りください、とはさすがにいえぬので、どこそこへ行きたいときに便利な地であったり、行き方帰り方だけでよい、というのであれば、せめてそれだけでもお手伝いをばさせていただく所存であるので、遠慮気兼ねなくそのときはお申し付けください。

毎度のことながら、本当に、色々とお世話になりっぱなしで至極恐縮の至り。

なにより度肝を抜かれた頂き物があるのだが、それはなんと

カップ麺取合せ三個組

である。

「今度ぜひ、東西の味の違いを比べてみてくださいな」

と、案内の途中の雑談に出たのだが、きっと忘れてると思って、とわざわざ揃えてくれていたのである。

ご名答。
すっかりわたしは忘れていたのである。

さすがお上さんの抜け目ないお心遣い、である。

勿論それ以上のたいそうないただキモノに、近くそれを披露できるような機会を設けたいところである。

ない袖は触れず、とひとりヘコまずに、懐手で泰然自若と構えて待つ。

ご家族で駅までお見送りまでしていただいたご厚意をしかと抱き、わたしの「特別阿房列車」は、京の夜から東京の朝へと向かったのである。


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