「隙 間」

2010年08月02日(月) とめられるものはなし

「竹くん」

課長の、わたしの勤務管理の長でありまた大学の先輩でもある二木さんに、呼ばれたのである。

夕方から会議があってさぁ。
はあ。
BIMの社内のやつ。一緒に出てよ。
はあ。

社内の、ひいては、グループ会社全体に行き渡らせるための、BIMモデリング作成要項のたたきができたらしく。

実際にモデル作成をやってる人間としての、意見とかをいって欲しいからさ。
はあ、いいですよ。

たしか二木さんはBIM推進室の参加者から、直接責任もってやるのは面倒くさいから、と外れたはずであった。

口は出すけどね。

うむ、その一環か。
と、ほいほい付いていったのである。

わたしだって、責任だとか義務だとか、面倒なことはなるだけ避けて、おいしいところだけをつまみ食いしたいものである。

斯く斯く然々で。
はい。
ああでこうで。
え、それはちょっと難しいんじゃあ。
そうなの?
それなら、ああでこうで。
そっかぁ。

遠慮会釈なしに、しかも、慇懃なよそおいで、チクチクと刺し放題のひとときを過ごす。

実際に具体的にいじくっているのは、なんたることかわたしともうひと方の、たった二人しか、いなかったのである。

わたしをとめるものはなし。

やれ終盤に差し掛かり。
作図要領などの策定を受け持っているテルマさんに、二木さんが、ニコリと微笑む。

竹くんを連れてきたのは、テルマくんの手伝いもしてもらおうと思って。

つとわたしをニヤリと見る。
テルマさんは、おおっ、とほころばせる。

……よろしく、お願い、します。
うん、よろしくね。

発言は、後々を考えて、慎重にすべきである。
とはいえ、わたしは立場上、そう深いところまで立ち入ることには支障が生じるのである。

日陰のとかげ。

幸い、二木さんはもちろんテルマさんら周りの方々はくだけたよい方たちである。

おいしいところだけをつまんで、タッパーに詰めて、お持ち帰りをせねばならない。

「ねぇ、もう誰かに教えたり、バリバリ使いこなせてんの?」

アライグマのように黒目をクリクリさせて、わたしに訊ねてくる。
我が社のボス、助さんである。
隣には、どうなの、と腕組み慎重に、しかし満腹で昼寝あけの熊のような顔で、日熊さんが顔を向ける。

まあ。そこそこ必要なところは問題なく。そこそこってところが、全体の方針が決まらないと、爪先深さの水溜まりなのか、肩まであるプールなのか、溺れてしまう海なのか。

溺れないでよぉ。

あっはっはっ、とヒグマとアライグマと一緒になってわたしも笑う。いや失礼。

修三さんの悲鳴を聞いた。

うっそぉ、まぁじぃっ?

はまぐりさんの肘を掴んで聞いてみる。

もう、変わり続けてとまらなくて、どうしよっか、て感じなんだよぅ。

お偉いさんが多くいる組織は、大変である。
どうか理不尽なしわ寄せがこちらにこないことを祈ろう。


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