| 2010年07月16日(金) |
「夜明けの縁をさ迷う人々」 |
小川洋子著「夜明けの縁をさ迷う人々」
久方ぶりの小川洋子作品であった。
パンチが、足らない。
これはわたしが勝手にかき抱いた、期待の想像の産物によるもので、たしかに短編が連なるひとつの文量からは、十分小川洋子の世界が表わされていた。
しかし、表れるのではなく。
滲み出して、しかしそれはとうにかさかさに乾ききって茶色にグラデーションをおこしているくらいでないと、いけない。
これはわたしの、あくまでも個人的な嗜好であるので、小川洋子作品の本作品の出来如何の話ではない。
本作品の一本一本くらいの短さのなかで、小川洋子の世界は音もなく静かに密やかに、存在していた。
そうである。
さすが小川洋子である。 読み味でひとをうならせる作家が、いったいどれだけあるのだろうか。 彼女の描く世界や言葉たちは、他に類を見ない、素晴らしいものである。
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