「隙 間」

2010年07月07日(水) 「レインツリーの国」と雨夜の大森

有川浩著「レインツリーの国」

うわぁ。
むっちゃ、こそばったい、せやけどクセになるわぁ。

という、絶品の恋物語です。

後天的に聴覚に障害を抱えてしまった女子と、彼女の作った「レインツリーの国」というホームページに書かれた、とある小説の感想に惹かれた男子が、メールのやりとりからはじまり、紆余曲折しながらも互いの「距離」を埋め合い、結ばれる物語です。

本作は、著者を世間で不動のものにした名作のひとつ「図書館戦争」と密接な関係にある作品です。

「図書館戦争」は文庫化されておらず、わたしはアニメ化されたときにそれを観た程度。

しかし。

意味もなく侮っていたところがありました。
ヤラレました。

この作品は、とても甘酸っぱく、むず痒く、こんちきしょうめっ、とこめかみをポリポリとかきながら読んでしまうような、健全軽快爽快な作品です。

是非、書店で見かけたら手にとってみてください。

さて。

今宵は大森である。

予定していた先週は学会で留守だったので、いつもと曜日が一日ずれるが、水曜の今日を選んだ。

入谷の朝顔市が、やっている。
明日が最終日である。
しかし仕事の期限が明後日であり、明日はどうなるかわからない。
イ氏のとこでもらうものをもらわねばならないのだが、大森にイ氏がいるのは今日と明日である。

ならば、それは今日にゆくしかなかろうとの判断である。

おそらく今日は、田丸さんはいないような予感がしたが、顔を合わす度に「RENT」の進捗状況を伺わすのも申し訳ないと己に言い聞かせ、閉まる直前に門を叩いたのである。

中はてんやわんやであった。

検査宿泊の誘導や手続きで、イ氏自らが待合室まで出てきて呼び入れてゆく。

わたしは悠々と文庫に顔を埋めて過ごす。

しかしどうやら、埋まり過ぎていたらしい。

気配がか細くなってきたのは感じていたが、やにわに、

「竹さぁん。どうぞ入ってきてくださぁい」

頭上からスピーカーで、呼びかけられたのである。

ビクンッと飛び上がってしまった。

まあどうせ一番最後にしてくれるだろうと、すっかり油断してしまっていたのである。

驚いて飛び上がっちゃいましたよ、というとイ氏笑っていた。

モニターで、実はみることができるのである。

なんだ、それはみてなかったなぁ、残念、とまたしても笑う。

この時点で、完全に田丸さんがいないことがわかる。

ならば、と遠慮なしにイ氏と話に花を咲かす。

どうせ後ろにつかえているひとはいないことだし。

「こんな落語があるんだよ」

ふたつみっつほど、あらすじをかいつまんで話してくれる。

やはり、物語は「語り口」だよねぇ、とうなずく。

噺家は、それが、いい。
古典なんてまさに、話す人が違うだけで、まったく飽きない。
下げはそれぞれでも、落ちは同じ。

他愛ないことばかりで、それだけがだらだら続いているのに、飽きない。
そんな作品で、何樫というのがあるよ。

あ、タイトルは聞いたことがあります、と脳みその三省堂の本棚を、ズラリと並び立てる。

あった。
たしか文春文庫あたりの表装だった。

たしか二冊か、分厚目のじゃあないですか。

そうそうたしか二巻だよ。

己に何樫かのものは、知らずにアンテナに引っかかっているものである。

ようやく花を散らせ、外へ出てみると雨である。

これからゆけば、朝顔市には間に合う。

しかし。

雨では、いけない。

花に恵雨ははなはだよいが、わたしの目当てである「袋盛り焼きそば」が、食えないのである。

明日に、かけよう。

最終日はさすがに時間ギリギリまで焼きそばの露店がやっているわけでもないだろうが、そこは我が運にもろもろを委ねよう。

「しゃべれども しゃべれども」のさつきはおらぬので鉢は買わないが、いつかのさつきのために、色々みておくのもよいかもしれない。

これはちと、イタい、かもしれないが、傍目にはわかるまい。

しとどに道を、濡らしてゆく。


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