「隙 間」

2010年06月26日(土) 「告白」

湊かなえ著「告白」

ミステリーと冠するものは手にしないわたしではあるが、ついうっかり、というのがある。

今やふたたびの話題作である。

これは、いい。
潔い。

引き合いにだすのが正しいかわからないが、小川洋子の閉ざされた静イツな世界、のようで、しかし、そこは何のタガもなく、ただ内に向かう、果てしなく閉じた世界の果てしない静かな世界、である。

全編が、それぞれの告白、独白によって語られる。

幼い我が子を殺された女教師。
担任である女教師の幼な子を殺した少年A、B。
彼の母。同級生。

純で幼いが故の少年らの勝手な葛藤、自尊心、思い込み、思い上がりのために、愛しの幼な子を殺された母の復讐劇。

これはミステリーではない。
なぜなら、何も、解決、完結させていないのである。

いや、物語は完結しているのだろう。
しかしそれは、すべての告白を聞いた読者の中の、頭ではなく胸のどこか隅っこに、ぽっかりと暗く濃く深い穴を開け、そこから得体のしらなさがあふれ出させてくる。

これが映画化。

観覧者の感想で、

エグい。
ここまでやらなくても。

などなど、描写に対してか、内容に対してか、ようく目に耳にする。
しかしこの程度のことは、現実的にありうることである。

ありうることだからこそ、ひとはより嫌悪感や残酷さを肌に体感することができるのである。

現代の少年たちの周りに渦巻く、大人でも持て余すほどの情報量。

わたしの頃のように、順を追って、その段階に応じた知識に触れてゆくのではないのである。

生きるという喜びや悲しみや、近道や回り道を覚えてゆく前に、いきなり生か死かを眼前に晒されてしまう世の中である。

この作品がギンレイで上映されることになるよう、是非期待したい。


 < 過去  INDEX  未来 >


竹 [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加