「隙 間」

2010年06月24日(木) 新経な心境、心音な真言

朝、シャワーを浴びようと湯沸かしのスイッチをひと押し、したのである。
ところが、ランプが点灯するどころか、うんともすんともいう気配がない。

よし、寝起きの不確かな指先で、曖昧な感覚で押したのかもしれないと、もうひと押し、ふた押し、み押し、と続けてみたが、大山鳴動するも蟻の子いっぴき、出てくる気配がない。

コンロをひねってみると、ぼうぼうと青い炎が「おはやう」と愛想を振りまく。

ベランダにでて、壁に張りついている室外機の周りを、へばりつくように探ってみる。

おっと。

自分が寝起きのままの下着姿だったのを思い出した。

二階とはいえ、人の目はある。

破廉恥な男と、通勤通学の衆目に晒してしまっていないか、飛び込んだ扉から顔だけのぞかせ、キョロキョロと窺ってみる。

うむ。
駅へ急ぐひとらは、それどころではないらしい。

わたしは覚悟を決めたのである。

えい、夏だ、かまうものか。

なけなしの下着をむんずと掴み、勢いをつける。
しかし、汗ばむそれはなかなかしぶとく、よろよろおっとっと、と浴室になだれ込み、キュッキュッ、と水栓を捻る。

はんにゃあはぁらぁ〜
みったぁしんぎゃあ〜

気合いと共に、頭だけ、さらにまずは、前髪のあたりだけ、水行に挑む。

しぶきが跳ねかからぬよう、馬跳びの前屈みの格好で、である。

うひゃっ、ひゃひゃ。

まさに文字通り、尻込みし、意味がないとわかりつつも、前屈みのまま尻を震わせる。

いかん。

ふたたび、気合いを奮い立たす。

オン、サラバ、タタギャタ……ギャピッ

真言などまともに知らず、その先を自分がどう口にしようとしたのか、もはやその必要さえないタイミングで悲鳴をあげる。

ヒュルルルル……っ。

もはやなんの意味も、思考も、気合いも、ない。

煩悩のままに、口から言葉がこぼれ出す。

もしや、これこそが真の真言というものなのかもしれぬ。

かくして。

朝の水行にてすっかり身を清めたわたしは、清々しさと腹立たしさをもって、一日のはじまりを迎えたのである。

みずごりは、どうやら土曜まで続けねばならぬらしい。

いったいどれだけ、不浄をおとしたわたしになれるのであろうか。

近所のいくつかある銭湯ですますのもよいが。


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