| 2010年06月22日(火) |
「妖怪アパートの優雅な日常 四」と手料理 |
香月日輪著「妖怪アパートの優雅な日常 四」
講談社「YA!ENTERTAINMENT」にて既刊の作品、その文庫版である。 「YA!ENTER〜」とは、講談社のいわゆるヤングアダルト、つまり中高生あたりの若者を対象としたシリーズであり、もしも文庫化していなければ、おそらくわたしとはまったく縁がないままであっただろう。
なんのことはない。 ひらたくいってしまえば、
「両親を事故で亡くした男子高校生・夕士が、ひとりでしっかり生きてゆこうと自立自活を目指して見つけたアパートが、妖怪から幽霊から怪しげな禁書魔書を扱う古本屋や骨董屋や、除霊師やその見習い女子高生やらが共に生活する「妖怪アパート」だった。
さらにひょんなことから魔道書の持ち主になってしまった夕士はそれに耐えうるだけの力をつけるための修行と、生活のためのアルバイトと、将来のための勉学とに奔走する日々を送る。
ただ普通の暮らしを望む夕士は、日々のさまざまなトラブルや出会いや出来事を通して、普通と普通とは違うということは、いったい何なのか、常識と非常識との境の曖昧さ、毎日を生きるとはなんなのかを教えられ、気づかされ、導かれ、成長してゆく」
という物語である。
説教くさくなく、楽しく読んでいるうちに自然にそんな金言が織り交ぜられており、これは忙しく気楽に娯楽を求める大人でも、十分楽しめる作品である。
しかし今回、わたしは大変不満である。
わたしが本作を読む目的である「るりこさん」の登場機会が、著しく、少ないのである。
「るりこさん」とは妖怪アパートの食事料理の一切を一手に引き受けている、手首から先しかない幽霊である。
自分の料理屋をもつことが念願だった彼女の手料理は、活字だけだというのに、猛烈に食指をそそらされる絶品料理ばかりなのである。
和洋なんでもござれ、だが、得意はやはり和食であり、これがもう、たまらない。
タネにマヨネーズを入れた「ふっくら和風ハンバーグ」など、大葉と大根おろしに、じゅわわと肉汁が混ざり合い、あっさりさっぱり満足な食べ応えであったり。
冷やしおからの甘酢風味や和え物や蛤と三つ葉のかき揚げや鯛の酒蒸しなど、米飯にばっちりの料理の数々。
日本人は米に限る。
照れ屋で、料理を誉められると白くきれいな細指を、もじもじと絡ませる。
もっぱら筆談らしいが、いわずとも欲しい献立をさっと用意してくれるその気遣い。
ああ。 きっと白い割烹着がよく似合う女性だったに違いない。
成仏できるまで、存分にその手料理を、わたしはたらふく食べ続けてあげたくなってしまうのである。
我が家の裏手の玉林寺にでも、出張してきてもらえないだろうか。
とかくこの作品は、ピコピコ携帯ゲームや漫画を読むくらいなら、ちょいとこれを読んでみてご覧なさいと思える、気軽で楽しい作品である。
次巻こそは、るりこさんの手料理にもっと出会えることを、願う。
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