「隙 間」

2010年06月21日(月) 「ひなた」

吉田修一著「ひなた」

先日のブランチで、文庫ランキングにこの作品が入っており、そういえば横積みしたなかにそんなのがあったはず、と。

ある家族の、兄嫁と弟の恋人もひっくるめて、の何気ない日常を、四季に分けて描いた作品である。

突如、兄夫婦が同居することになる。
言い出したのは兄嫁の圭子で、勤め先の編集部で頼りにされる存在。
弟の彼女であるレイは、元千葉のヤンキーで、女子が皆憧れる有名アパレル会社の広報に就職を決める。
兄の浩一は信金に勤めながら、趣味で劇団のサークルを続けており、実は親友の田辺を密かに想っている。
弟の尚純は大学を卒業しても就職せず、叔父のバーでアルバイトをし、やがて叔父の家に転がり込むが、自分は母の子ではなく、母の妹と父の子であることを知る。

そんなこんなの、それぞれの内に抱えるものをそのままに、季節は変わらず過ぎてゆき、変わらず変わり移ろい過ぎてゆく季節とそれぞれの、変わらぬひなたのような日々。

作品中に出てくる舞台が、いけない。

文京区は茗荷谷、小日向のあたり。

茗荷谷はかつての勤め先であり、さらに、かれらの住まう小日向は、高校の同級生の実家があるあたりで、また拓殖大は試験会場に通うとこでもあり、あああすこの坂のことか、と容易に思い描けてしまう。

そしてたまに出てくるのがお茶の水、神保町であり、これはまた毎週通っているところで、圭子の勤める出版社とは甘木出版社か、何樫季節か、はたまたなどと、ニヤリとしてしまう。

やはり、妻とは、というところで、一度は考えてしまうだろうことが、呟かれている。

「みんなを送り出して、みんなが帰ってくるまで、家にいるでしょ?
だけど、なぜここにいてみんなを待ってていいのかしら?」
「お父さんの妻で、わたしたちのお母さんなんだもの。でーんと、待ってていいに決まってるじゃない」

そうよね。妻として、ちゃんと愛されてなきゃだめよね。

理由なんか、いらない。

しかし、理由がなければ不安になるのである。


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