村田沙耶香著「授乳」
群像新人文学賞を受賞した表題作他、二編。
なるほど。 なかなか濃ゆい、とろりとした世界を描いている。
三作品の三人の主人公である少女(女性)たちは、危うさと揺るぎなさとのはざまを、我がものとしている。
自分が信じた自分の世界こそが、安住の世界であり、はかない世界でもある。
しかしその世界を、その手でしかとつかみ、全身で抱きしめている。
女であることを厭い、忌避し、しかし女であることで、その己の世界を築き、保ち、壊してゆく。
おとなしく無口な家庭教師の秘密を握った少女は、彼を彼女に隷属させてゆく。
ポケットに収まってしまう小さなぬいぐるみだけが本当だと、日々をそつなく明るく振る舞って見せかけている少女は、やがて自分と同じようにぬいぐるみを連れている幼い女の子と出会い、本当と嘘と、嘘の本当と本当の嘘に生きてきた現実の姿を目の当たりにする。
自分のことを絶対的に許してくれる男と出会い、求めるのは、男からの無言で無造作な、受容という許しだけ。 許されるために、許すために、昼ドラよりもくさいお芝居をふたりだけで繰り返し続け、ふたりだけでない世界にいることを認められず、許し難く思う少女。
巻末の解説で、
「丸裸・丸腰、むき出しのままでこっちに向かってくる作品(作家)」
と評されているが、まさにその通りの印象である。
作品中には、過激な性描写など一切出てこない。
しかし。
しっとりと汗ばんだ肌をピタリと押しつけ、決してほぐれることない腕を絡みつけられ、その肢体に鼻と口を塞がれてしまうかのような、冷たさと熱さと、甘酸っぱい息苦しさと甘美さが、詰まっているようなのである。
その包みをつま弾いて破裂させ味わうか、想像のみで楽しむか、微妙なところで、個々でわかれるのかもしれない。
受賞作品とは、かくのごとき力を内包せしもの、なのかもしれない。
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