「隙 間」

2010年05月16日(日) 一、二、三、じゃー!

今週末は、

江戸三大祭り
「三社祭り」

である。

先週同様、貴重な土曜は気づけば夜、という体たらくであった。

その空白の時を埋めるべく、浅草へと足を向けたのである。

東上野のバイク街を抜けると、通りの正面に、

「スカイ・ツリー」

が突っ立っているのが、見えたのである。

万万が一ではあるが、わたしはここの現場で図面ひきをやっていたかも、しれなかったのである。

とはいえそれは、ドラフトマンとして機械のように、示された通りに図面化してゆく、というものである。

わたしは既に、別に出向していたので、笑いながら丁重にお断りしたのである。

断らなければ、かの人はわたしをあすこにねじ込んでみせていたであろう。
そして、今のわたしはおそらく、なかったに違いない。

よかったよかった。

感慨深く、やさしい気持ちで、眺めたのである。

さて、あっという間に、国際通りである。

ROXの脇道に、人だかりができていた。

神輿の声は、聞こえない。
代わりに、

「お願いっ。もういいからっ」

女性が板前姿の男性にしがみつく声が。

酔っ払いが女性にちょっかいをだし、男性がそれを救った。
が、酔っ払いもしつこく食い下がる。
人だかりができてゆく。
警察官が来てしまうかもしれない。

というところだったらしい。

流血沙汰にはなっていなかったようだが、祭りの酔っ払いである。
どうなるかわからない。

「おい。ケンカか?」

野次馬の誰かが大声でいうと、ようやく離れ、男性は女性に引っ張られながら、去ってゆく。

「祭りで、昼からみんなお酒飲んでるからねぇ」

隣の品の良さそうなお爺さんが、驚いていたお婆さんに、そう説明していたのである。

うむ。
残念だが、ちょっと違う。

お祭り騒ぎで気が立ってはいるのは、担ぎ手たちである。
そして、酔っ払いは祭りに限らず、この辺りでは昼から、いや朝からいるものなのである。

さて騒ぎもおさまり、いきなりの歓迎であった。
人垣が波に変わり、ロック座の角を曲がる。

すると。

そこは幸運にも、二ノ宮の神輿の引き渡しの場所だったのである。

向こうから、神輿が、やってくる。

「下がってっ。挟まれて怪我するよっ」
「ほらっ、そこの人たちも。あぶねえからっ」

先導役が大声で、見物客たちに注意する。

虎ロープが、ひかれてゆく。

神輿が、来た。

担ぎ手が、ここで入れ替わるのだが、何やらすんなりとは、ゆかないようである。

「わあっ」
「キャアッ」

置かれた神輿の向こう側で、声が上がり、人波が、ザワリと揺れたったのである。

ピー、ピピーッ!

警笛と共に、警察官がかき分け、割り込んでこようとくる。

喧嘩。

が起こったのである。
担ぎ手同士のようであった。

警察官が割り込める隙間などない。
仲間たちが、取り囲み、しがみつき、ひっぱり、取り押さえようと必死である。

台の上に長がよじ登り、拡声器をくれ、と手真似をしていた。

「三社の祭りを、楽しい、祭りにしなくちゃいけないんだ」
「そうだ、そうだっ」

見物客から合いの手が、あがる。

もうひとつの町会の長らしき男性が、拡声器を渡してもらい、壇上から、同じように、話す。

喧嘩騒ぎは、おさまったようである。

まずは、三本締め。
そして、一本締め。

神輿が持ち上がり、ふたたび街を練り進んでゆく。

三社祭りのために、一年を過ごす。

これが過言ではないひとたちが暮らす街、である。

祭りのあり方、参加者のあり方。

街ぐるみで、やってきている祭りである。

ひとの熱い息吹きが、渦巻いている。

熱気を冷ましながら雷門で、ふと思いついたのである。

あすこへ、いってみよう。

浅草松屋、老舗デパートである。

決して順調ではない経営状態であるが、東武鉄道が建物内に乗り込んできている、北への玄関でもある。

日光へゆくには、まずここから、であったりもするのである。

わたしは、勝手ながらもの寂しい風景を覚悟していたのである。

違った。

屋上は思いのほか、親子連れや若い恋人たちの姿で賑わっていたのである。

フェンス越しに隅田川、そして、スカイツリー。

実は行きがけの道の途中で、孫の自転車につき合っていた老婦人に教えてもらっていたのである。

バッチリ、見えるから。

バッチリ、見えた。
下町のおせっかいな親切心に、感謝、である。

この街のひとたちは、しっかりと、活きているのである。

さあ、わたしも活きよう。

一、二、三……。
じゃぁーっ!


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