万城目学著「鹿男あをによし」
先年、テレビドラマ化された原作である。 玉木宏、綾瀬はるか、佐々木蔵之介、児玉清らの配役で、抜群に楽しめたドラマである。
それよりなにより。
麗しの多部未華子が、これまた素晴らしい。
恩田陸原作の映画「夜のピクニック」で、貫地谷しほりにドキンとさせられつつも、ズキュンと飛び込んできた女優、多部未華子である。
活字のなかの主人公たちが、まさに彼ら(彼女ら)にパチリとかさなるのである。
名をみるたびに多部未華子が凛とした目で睨み、玉木宏が神経質な顔で狼狽し、佐々木蔵之介が涼しげに微笑む。 綾瀬はるかがかりんとうをかじれば、児玉清が優雅に髪を撫でつけ、鹿が「びい」と鳴く。
鹿島大明神となまずが要石をめぐれば、京都の狐と奈良の鹿と大阪の鼠が卑弥呼をめぐってまわりまわる。
はた目に文庫にしてはぶ厚いのを、たったの二、三日で読ませる軽妙な物語である。
奈良京都に縁がある方は、おやつをつまみながらでもご一読するによいかもしれない。
作中に登場する奈良の奇石群遺跡等、わたしもなかなか懐かしさを覚えながら項を繰った。
かつて一度、レンタル自転車で山や田を駆け抜けて巡った記憶がある。
しかし、肝心要のあそことそこにはまだいったことがないのである。
ふところとこころがゆるせば、また足をのばしたいものである。
奈良は鹿、京都は狐、大阪は鼠、と神の使いが定められているが。
最近、湯島の地下鉄ホームで線路脇を駆け抜ける鼠たちの姿をよく見かけるのである。
根津の街に神田の大黒様、おっと上野弁天島の大黒様も忘れちゃあいけない。 湯島天神には牛の像もあり、お茶の水には太田姫稲荷が佇む。
おや。
わたしの日常のなかに、鹿がいないではないか。
どこか近所か通り道に、ひょいとあるかもしれない。
シカし「鹿」となると、茨城県の鹿島か奈良くらいシカ、思い浮かばない。
シカたない、といったところである。
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