青山七恵著「ひとり日和」
芥川賞受賞作である。
都内にひとり住む親戚の祖母・吟子さんの家に、高校を卒業して進路がなにも決まらない知寿が、一緒に暮らすことになる。
ひとり同士の、共同生活。
どう生きたらよいかわからない若い知寿。 ずっと生きてきた吟子さん。
悲しいことや辛いことなんかを通り過ぎてきた吟子さんくらいの歳にワープできたらいいのに。
知寿のやや乱暴だが素直なひと言である。
外の世界で、わたしはやってゆけるかな……。
吟子さんの家を出て、本当のひとり暮らしをはじめようとするときに、新しい世界(生活)への不安をこぼす。
外もなかもないわよ。世界はひとつっきりなんだから。
吟子さんが、答える。 歳を経ないと、なかなかわからない言葉である。
世代が離れた者同士が同じ時間や場所を共有する物語は、それこそ当たり前のように様々な差異に満ちたものとなる。
ときにあたたかく、 ときにつめたく。
巻末の解説に、透明感のある文章、と評されている。
透明感。
声ならば容易に想像ができるが、文章ではどうだろうか。
しかし実際に読んでみると、「なるほど」とあっさり理解できてしまったりするのである。
芥川賞作品の多くの特徴は、そこにあるのである。
透明感であったり、 寂寥感であったり、
はっきりしているものでは、
孤独感であったり、 絶望感であったり、
である。
しかしそれらだけで、いくらおしくらまんじゅうされてひしめき合っていても、仕方がないのである。
あたたかい非情さ、 つめたい温もり、
ゆるかな激しさ、 寂しげな愛しさ。
相反するものがそこに同じにあるからこそ、惹かれるものがあるのである。
やがて形にできるようにならねばならないのである。
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