今、わたしが携わっている業務に、三次元モデルによる設計、というのがある。
それは業界的に、これからの可能性、ということで大手ゼネコンや設計事務所などが、
「これを機に」
覇権を争わん、と鼻息があらくなっているところ、それを、
「先走って火傷はしたくない」
と一歩後ろから様子をうかがっているもの、などが、ケンケンガクガク、であったりするのである。
一般に、これらの三次元云々を、
「BIM」
と、英略語で呼び表しているのである。
「竹さん。BIMって、何の略なんですか」
不意に、ガンさんが尋ねてきたのである。
「BIM」というのは、ですね。 ええ。
しばし考え込む。
この場合の正解は、 どちらか。
ガンさんは、鉄筋工から自分の設計事務所を立ち上げるまでにいたった、強者である。
が。
日々、意味もない茶々をわたしに入れ、なかなかお茶目な洒落者でもある。
「わかりません」
振り返って、答えたのである。
え、そうなんですか。またまたぁ、ホントは知ってるくせにぃ。
にやにやと、ひじでわたしの肩を突っついてくる。
ますます、わたしはわからなくなったのである。
どちらが、正解か。
「さっさと調べたほうが早いじゃないの」
隣席の馬場さんが、カタカタとキーボード叩き仕事をしながら、笑ったのである。
それは、そうだけれど。
ガンさんが、じゃあ調べてわかったら教えてください、と逃げてしまったのである。
調べるまでも、ないに決まってるじゃあ、ないですか。
「じゃあ、BIMって何の略なの?」 「えっとですね、
B……ブタ肉 I……いい肉 M……丸大ハム
です」
おや、と馬場さんが眉をしかめる。
「ハンバーグでもいいですよ」 「マルシン、じゃなかったっけ」
え。 だって。
「おおきくなれよぉ。
まーるーだーいー♪ ハーンーバーァーグ♪
って、子どものころCMやってませんでしたか」
馬場さんとわたしは、同じ年齢である。
しかし。
永遠の二十六歳、
を自称しているのである。
十もサバを読もうなぞ。 わたしも共犯となろう。
もとい。
「だって、
まーるしん♪ まーるしん♪ ハンバァグ♪
でしょう」
いや、丸大です。 いいや、マルシンだって。
どちらでもかまわない論争に、しばし突入してしまったのである。
他にもパターンを用意していたのに、披露することができなかったのである。
ちなみに、「BIM」の真面目な正解は、
Bilding Information Model
である。
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