「ポー川のひかり」
をギンレイにて。 歴史的宗教的に貴重な資料が収蔵されている歴史図書館で事件が起きる。
一夜あけて、貴重な図書が床一面に「くさび」で打ちつけられていたのである。
容疑者は学会でも優れた研究者として有名な哲学教授であり、生徒にも司教にも、人気と信頼があつかった。
彼は車を乗り捨て、カードと手持ちの現金だけを手に、ポー川の打ち捨てられた廃屋に暮らしはじめる。 付近の村人たちは、彼の風貌から「キリストさん」と呼び、やがて彼に悩みを打ち明けて話を聞いたり、あるいは廃屋の手入れを手伝ったりと、彼を受け入れ慎ましくもあたたかい日々が流れてゆく。
しかし、そこにある日。
「この付近一帯は国有地で、住民は不法占拠にあたる。罰金を支払い、即刻立ち退くように」
と宣告されてしまう。
書き方がわからないから請願書を書いてくれ、あなたならわかるだろう、と「キリストさん」に助けを請うが、彼はやさしく断る。
「あなたたちの言葉で書いたものが、正しい」
しかし彼は郵便局にゆく青年に、自分のカードを渡し、これで皆の罰金を払ってきてくれ、と密かに頼む。
カードから彼の所在が警察にみつかり、また時を同じくして村にも強制撤去工事の手が伸びてくる。
なかなかな作品。
ロードショー時にとても気になっていた作品であった。
なぜ彼は神への冒涜である、貴重な書物をくさびで打ちつけるなどという行為をしたのか。
相談にきた学生に、彼は周りの貴重な書物を見回しながら答える。
「真実は私たちを救いはしない。ただ欺くだけだ」
真理をついた言葉である。 これを、「なにを」と浅はかな解釈で受け取られてしまうと困るのだが、それならそれでも、よい。
とはいえ。
何が起きようとかまわず、ポー川は流れてゆくのである。
これもまた、真理、なのである。
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