糸糸山秋子著「海の仙人」
あなどるなかれ。
文庫にしてたかが四ミリ程度の厚さ、と。
海の「仙人」などと子供だましなものを、と。
「ファンタジー」などという名の、さらに「神の親戚のできの悪いほう」などというふざけた人物が登場など、ちゃんちゃら、へそで茶を沸かすわ、と。
そのすべてを覆し、ガツン、とくらわされること請け合い、の作品である。
宝くじが当たり、金には困らない生活ができるようになった男は、仕事を辞めて敦賀の浜の町に暮らしはじめる。
アパートの大家となり生活費はそれでまかなえる。 なにをするでもない。 釣りと海で泳ぐこと、それだけの慎ましい日々に、
「神の親戚の、できの悪いほう」である。名前は「ファンタジー」とでも呼ぶがよい。
というあやしげな人物が現れ、ともに暮らすことになり、やがて元同僚の女と、そして男にとって「縁」がある女と、出会い、過ごし、月日は流れ、別れ、そうして。
文学界新人賞はじめ川端康成文学賞、そして芥川賞などを受賞した作家として、まさに強くうなずかされる作家である。
あらためて、著作を読み漁ってみよう。
肝ともいえる「イッツ・オンリー〜」は、原作としてまだ読んでいないのである。
西川美和監督ではないが、なかなか骨太、な作品を目にできる貴重な作家である。
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