「隙 間」

2009年12月05日(土) 「フィンガーボウルの話のつづき」と「サンシャイン・クリーニング」

吉田篤弘著「フィンガーボウルの話のつづき」

ついつい手にとってしまう作家のひとりに、吉田篤弘がなってきたようである。

世界のはてにある食堂。

その物語を書きたい、と筆を握るがまったく、ぴくりとも筆先は動かない。
筆を握っていないときには、ちらちらと物語のしっぽがみえるのに、すわと筆を握った途端、たちまち消え失せてしまう。

そうして書きあぐねているときに、ひとりの不思議な作家のことを知り、彼のことを調べはじめる。

未完の物語ばかりを残し消息不明になった作家、ジュールズ・バーン。

彼の物語とビートルズの「ホワイト・アルバム」の関係に気づき、やがて彼は、ようやく物語を書きはじめる。

ビートルズの「ホワイト・アルバム」にちなんで、各編にシリアルナンバーが打たれている短編が十幾つ収められている。

ひと言でいうならば、やさしく不思議な物語たちである。

わたしはビートルズを、まともに聴いたことが、ない。

ビートルズなら、いやいや、シナトラであろう。

という、ややひねくれたものの見方をしているのである。

しかし、ここらでひとつ、そろそろ聴いてみるべきときのように思ってきた。

さて。

「サンシャイン・クリーニング」

をギンレイにて。

本作品は、働く女性の応援歌、のようなうたい文句がつけられていたが、シャンテ・シネで予告編をみかけたとき、

これはできるなら観ておきたい。

と思った作品だったのである。

さすが、わたしの嗜好にぴたりとあったギンレイである。

シングルマザーのローズは妹のノラとクリーニング会社を一念発起で立ち上げる。

ただのクリーニングではない。
事件事故現場の跡をきれいにする仕事である。

ローズは高校時代チアリーディングのエースであり、アメフト部のエースと付き合っていた、いわば勝ち組だった。

しかし、エースはチームメイトと結婚し、ローズとは今でも不倫関係をずるずる続けていた。

彼女たちを見返してやりたい。

そんな意地があった。
妹のノラは、何をやっても長続きしないフリーター。

「姉さんはもう、わたしの世話まで焼かなくていいから」

姉妹の深い愛を感じさせられたり、女の弱さと強さは紙一重だとうなずかされたり、なかなか明るく爽やかに、こころを洗い流してくれる作品である。


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