| 2009年11月26日(木) |
「不倫は家庭の常備薬」 |
田辺聖子著「不倫は家庭の常備薬」
紫綬褒章、文化勲章を受章されたしかるべき方の作品である。
無礼ながら、御歳とこの作品名との釣り合いや如何に、との好奇心で手にしてみたのである。
七編からなる短編集であり、七通りのいわゆる不倫にまつわる人々の観念、信念、哲学などが織り交ぜられているのである。
なるほど、「亀の甲より年の功」である。
若々しさこそあまり感じないが、それに相応しく、しっとりと含蓄情念諦観がうまい具合に染み渡ったものとなっている。
「家に帰るのが浮気、帰らないのが不倫」
「週末をひとりで満足に過ごせないものは、不倫をしてはならない」
「体を交えなくても、夫や妻には晒さない思いや言葉を交わすこと、そっちのほうが十分、しっかりとした不倫行為」
などなど、うむう、とへの字に頷かされてしまうことごとが、散りばめられているのである。
「人恋しいなら、早く家に帰って奥さんにあたためてもらえばいいじゃない」 「家族は人じゃない。自分の分身だ。自分の分身に人恋しさをうめてもらえるものじゃない」
これには、深く、考えさせられるものがある。
ひとつは、「家族は人じゃない」を額面通りにうけとり、なんて淋しい非道いことを、と寂しいだけのもの。
もうひとつは、これこそ真意だと思うのだが、「自分の分身」だと言いきっていることである。
つまりは、傲慢とも思える表現ではあるが、家族である身内は、自分そのものである、という都合のよい解釈だが、至高の愛情表現である、というものである。
巻末に唯川恵の解説の中に、
「男と女は違う世界の生き物であり、人間の男を理解するよりも、動物のメスのほうがよっぽど想像がつき、共感や理解ができる」
とある。
うんうん、そうかも。
と心当たりのある女性は、ご一読されればさらに、痛快な気持ちになれるに違いない。
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