荻原浩著「四度目の氷河期」
御徒町から谷中まで、何もかもかも脱ぎ捨てて、大声をあげながら全力で走って帰りたい気持ちです。
これは、たまりません。
軽妙で、巧妙で、珍妙で。
可笑しくて、切なくて、やるせなくて。
初めてスペースマウンテンに乗ったときのように、あれよあれよと振り回され。
そのすべてが、心地よく、飽きることない絶妙なタイミングで読み手を揺さぶり。
じわあっと目頭を熱くさせたかと思えば、顔が熱くなるほど恥ずかしい気持ちにさせたり。
ぽかぽかとあったかくさせたかと思えば、ひとりではいられないほど胸を苦しくさせたり。
ちょいとぶ厚いけれど、損はさせねいっ! 読んでみやあがれいっ!
といった具合です。
荻原作品といえば、滑稽、とも違う、やはり解説にある通りの「ケレン味」あふれる舞台装置、ともいえる設定です。
僕のお父さんはクロマニヨン人。
という少年ワタル。 母親はロシアの研究所に研究員として数年間遺伝子研究をしていた経験を持つ遺伝子学者。
原人「アイスマン」の研究に携わっていた。 アイスマンの遺伝子を自らの卵子に受精させ、そうして僕は生まれたんだ。 研究のために雌(つまり女の子)を生み分けしなきゃならないのに、間違って僕(雄、男の子)ができちゃったから、お母さんは日本へひとり帰されちゃったんだ。
僕の髪が茶色っぽいのも、じっとしてられなくて走り回ったり大声で叫び回ったりしたくなっちゃうのも、クロマニヨン人の血がそうさせてるんだ。
そんなワタル少年が、さまざまな葛藤や歓喜を交えて青年に成長してゆくのです。
彼を支え、引っ張り、つまづかせ、やっぱり肩を支えてくれる素敵な友だち、大人、大切なひと、サチ。
舞台装置のオチは予想内ですが、それが最後に、涙と鼻水の猛吹雪を呼び込みます。
極寒のロシアの地で、これ以上ない人肌のあったかさを、確かめられること間違いありません。
|