「隙 間」

2009年09月24日(木) 「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

吉田篤弘著「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

ほお。
これは、いい。

本当に美味しいものは、
「美味しい」とか、
「美味い」だとか、

そんな言葉を云うより早く、

「ほお」だとか、
「おおっ」とか、

感嘆が口から飛び出す。

「つむじかぜ食堂の夜」に続く、「月舟町三部作」の第二作品目です。

本当に、あたたかいスープをひと口すすって、ほお、と美味しい息をはいて、湯気がたゆたうのをぼんやり眺めながら、身体の芯が「ほっこり」とあたたかく満たされてゆくような、作品です。

オーリィ(大里)は会社を辞め、日がな近所の映画館の月舟シネマに通い始める。
その途中で出会ったパン屋「トロワ」のサンドイッチがきっかけで、トロワの主人である安藤さんに、「うちで働かないか」と誘われ、働きはじめる。

「三度目の商売だから、安藤、トロワ。
アン、ドゥ、トロワ、てね」

小学生の息子のリツくんと父子ふたり暮らし。
オーリィのアパートの大家さんの大屋さん、通称マダム。
オーリィが密かにスクリーン越しに恋している脇役女優のあおいさん。

月舟町に、住みたくなります。

住めないまでも、足繁く通いたくなること、請け合いです。

そして。

あたたかいスープを食べたくなります。

スープといえば、なんのスープでしょうか?

ポタージュ、コンソメ、トマト、ホワイト、コーン……。

わたしにとってのスープといえば、まさに著書にあるように、

「名無しのスープ」

です。

今では姉のみがレシピを受け継いでいる、我が家のスープ。

姉も、名前を知らないそうでした。
教えた母も、「名前なんてないわよ」と云っていた記憶があります。

夜風が涼しくなりはじめるこの頃――。

それぞれの「スープ」で、ほっこりしてみませんか?


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