「隙 間」

2009年09月22日(火) 「白日夢」「クリーン」「サマー・ウォーズ」

ここのところ、ずうっと、甘やかしていました。

自分を。

楽しさだったり、
感動だったり、

それを、ただ与えてもらわんとして求めることだけに執心していたのです。

わかっちゃいるけど、やめられない。

観れば、読めば、それだけで与えてもらえるのですから、それだけでいちゃあ、ならない。

与えるまでゆかずとも、生み出す、作り出す気持ちを、一日でも忘れちゃあ、いけない。

目の見えない脚本家でも、耳の聴こえない歌手でもないのだから。

ということで、連休最終日は、映画のはしごをしようと決めました。

まずは、

「白日夢」

を銀座シネパトスにて。

谷崎ファンは観るべし、との某レビューのひと言に負けました。

とりたててファンというわけではありませんが、嫌いじゃあ、ありません。

その某解説に、

「1981年に挑戦的かつ圧倒するその内容で一大センセーショナルを巻き起こし……伝説の問題作として映画史にその名を刻んだのである」

と書いてあれば、たいがいがわたしの期待はずれと予想がつきつつも、ついつい観てみやう、という気にさせられてしまう。

交番勤務の警察官が、空き巣被害者の女性と出会い、思いを寄せるようになります。
やがて男は妄想(白日夢)と現実が錯綜しはじめ、女の「あの女を殺して」という囁きに支配され、実行してしまいます。
妄想なのか、
現実なのか。

妄想とは違う現実のズレに男は混乱し、そしてとうとう。

本作品のみどころ。

「バベル」で菊池凛子がやった体当たり云々の演技、と似たような、いやそれ以上かもしれない、本作品がデビュー作という西条美咲さんの、その体当たり云々の演技、につきる。

伝説か知りませんが、わたしにとっての「谷崎潤一郎のエロチシズム」とは、濡れ場などではありません。

妄執。
フェチシズム。

そして。

憎めなさ。

それらのようなものたちなのです。

その点でいうと、やはりハズレだったように思います。

さあ、次です。
場所を表参道に移します。

「クリーン」

をシアター・イメージフォーラムにて。

マギー・チャン主演です。
ジャッキーの恋人、メイちゃん(ポリスストーリー香港国際警察シリーズ)です。

木村拓哉出演作品「2046」にも出演しています。

メイが怒って走り出させた原チャリを、ジャッキーが背中のリュックを掴んで思い切り尻餅着かせられていたお茶目なマギーです。

それが、本作品でカンヌの主演女優賞です。

麻薬中毒のロックスター夫婦。
夫のリーが中毒死してしまいます。
それは妻であるエミリーのせいだとされ、元よりリーの両親に預けて育ててもらっているひとり息子のジェイにも、

「ショックがあるうちは、しばらく会わないでやってくれ」

と義父のアルブレヒトから頼まれてしまいます。
エミリー自身も麻薬を断ち切り、仕事に就き、そうしない限りはジェイに会う資格など自分にはない、とそれにうなずきます。

息子に会える自分になるため、更正するため、自分の夢だった歌手の道には戻らず、つまらなくても、頭を下げて回っても、ようやく洋服屋の販売の仕事に就くことになり、ジェイとも会えるように。

それには、義父のあたたかく寛大な愛の計らいがあり、

こんなひと。
ぜったいに、
おらへんっ!

と思いつつも、

ホレてまうやろぉっ!

と叫びたくなります。

「私たち夫婦は年老いて、もうじき死ぬだろう。
そのあと、誰がジェイを守ってやれる?
君はジェイの母親だ」

仕事が決まった矢先、そして、ジェイとつかの間の再会の日に。
施設内で作ったデモテープを聞いたプロデューサーが、エミリーにスタジオで待っている、とオファーをかけてきていた。

ジェイと暮らすためには、自分の夢なんか追ってはいられない。

だけど、それはまさに、最後のチャンス。
それに賭けてみたい。

義父にそれを告げる。

「それでこそ君だ」

と、エミリーの予想に反して、義父は彼女の肩をやさしく包む。

「余裕のあるときに決断するのはたやすい。
しかし、困難なときに決断するのは、勇気がいる。
そしてきっと、息子だったら君と同じ決断をするだろう」

と、背中を叩く。

ホレてまうやろぉっ!

「ただし条件がある。
レコーディングには君ひとりでゆくこと。ジェイは連れて帰る」

うんうん、やはりそうだろうなぁ。

「レコーディングが終わったら、ジェイを迎えにくること。
それから一緒に暮らしてゆく方法を考えよう」

こんなひと、おらん。
こんなひと、ぜったいに。
ぜったいに、おらへんっ。

それはもちろん、麻薬に手を出すほうが根本的に悪いです。

そんな親に子を育てさせることに不安や危険はあります。

まして依存していたという事実があると、更正したとはいえきっとまた、と考えるでしょう。

「リーにいて欲しい。
ひとりだと、ダメになってしまう。
ひとりきりは、いや」

禁断症状に震え、苦しみ、泣きながらエミリーは叫びます。

エミリーを演じるマギー・チャンが、「誰のために」生きようとしているのかという、その移り変わりを、見事に演じてます。

「私、刑事の恋人として見事に振る舞っちゃった」

と、犯人に聞こえる声で話して人質に捕られてしまったおっちょこちょいのメイは、遠い昔話です。

さあ、マイホーム上野に戻ります。

「サマー・ウォーズ」

を上野東急にて。

この歳になってアニメなんてっ。

ひとりなら気にしません。

いや。

この監督作品なら、です。

「時をかける少女」のアニメ化で話題を読んだ、まさに口コミで単館上映からはじまって火がついた名作と名高い監督の作品です。

ものさしで比べたらいけないのは、わかります。

ジブリ、超えてます。

もちろん、対象年齢に違いがあったり、伝えたいことに違いがあったりするのはわかります。

ストイック。

といっていいのかわかりませんが、物語がとにかく、気持ちが良すぎるほどに、ストレートでシンプルで、迷いがなくて、欲張ってなくて。

パンッ。

と顔の前で手を叩かれて、気付くと注射が終わっていて、目の端をわけもわからず涙がこぼれているような。

それは痛みなんかじゃなく、嬉し涙だったりする。

そんな作品です。

起承転結

のお手本です。

いや。

真似なんかできないでしょう。

天にも昇る気持ちで、
地の底にたたき落とされました。

クレジットをよく確かめなかったけれど、ガイナックスが絡んでいるんじゃないか、というキャラデザインのような気がしたけれど。

そんなことは、調味料や調理方法の問題で、素材を造り出す側として、ただただ茫然自失です。

いやきっと、こう言われるでしょう。

「まだ負けてないっ!」


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