| 2009年09月20日(日) |
「RENT」映画版と舞台版の比較 |
「RENT」の映画版DVDには、特典としてなかなか面白いものがついている。
監督のコロンバスと主演のふたり、マーク役のアンソニー・ラップとロジャー役のアダム・パスカルが、同時解説をしているというものである。
このシーンは……。 この画面にはトリックがあって……。
などという裏話から、映画版キャストとして「RENT」に初参加となった(監督のコロンバスも含めて)メンバーと舞台でずっとやってきたメンバーとの、それぞれの思いを語ったりしているのである。
それは、特典映像の未公開シーンについてもなされている。
舞台での名シーンが、映画に入っていない等の理由が監督の口から語られているのである。
興味深かったことについてのみ、わたしも触れてみようと思う。
「RENT」の代表曲といえば、
「SEASONS OF LOVE」
である。
この曲は実は、
「物語の流れとは、まったく関係がない曲」
なのである。 早合点してはならない。 「流れ」とは関係がないだけで、「物語」そのものを歌っている重要なテーマ曲なのである。
舞台では、休憩明けの第二幕のイントロに初めてこの曲が歌われる。
「休憩で飲み物を飲んだり、いったん「RENT」の世界から離れた観客をふたたび「RENT」の世界に引き込むために、この曲は歌われる」
「映画には休憩なんかない。だから、作品のすべてのはじまりのところで、観客を「RENT」の世界に引き込むために、イントロにもってきたんだ」
この映画は初っ端に、全身が鳥肌に襲われるほどの衝撃を受けさせる。
予備知識も何もなかったわたしが、現にそうだったのだ。
余談だが、メインキャストがステージに並び、ピンスポットのライトで徐々に照らし出されてはじまるこのシーンは、舞台照明の(セミ)プロである友人が、たいそう感動感心したそうである。
そして「RENT」のもうひとつの代表曲、
「Noday but today」
がある。 ラストシーンに歌われているのだが、その映像の未公開版になったほうのがある。
それは、正直、わたしは単純に、
こっちのほうが、全然いいっ。
と、叫んでしまった。
息ができなくなるほど、うずくまり顔も上げられぬほど、感動させられたのである。
しかし、監督の解説で、うむう、と納得させられてしまったのである。
未公開になったのだから、それに触れてもよいだろう。
公開版では、マークが記録していった仲間たちの愛のあふれる日々のフィルムが流され、一方、その未公開版では、オープニングの「Seasons of love」同様、メインキャストたちがステージに立ち、「Noday but today」を歌い上げるのである。
監督曰わく、
「もしこちらを採用していたら、観客は、「ああ、この人たちは「RENT」という世界を「演じて」いたんだ」と、「RENT」の世界から遠ざかってしまっただろう。だから、そうはしたくなかった」
なるほど。
たしかに見返してみると、一度でわかるほど、納得できてしまう。
感動はとてつもなくでかい。 しかし、映画は舞台ではない。
観客も含めて作品をつくる舞台ならそれがいい。
映画は、観客は観るだけで参加はできない。 参加できないものを作品の世界に引き込み、感動を味わわせ、擬似的に参加したように感じてもらうには、監督のコロンバスの選択は正しかったように思う。
しかし。
未公開版のシーンとして映像をつけてくれたことに、いたく感謝の気持ちでいっぱいである。
作品をつくる、ということで、大切なことを教えられたように思う。
至極当たり前なのだが、すべてを表現すればよいわけではないのである。
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