暦の上では立秋も過ぎた。
ということで、芸術の秋としよう。
「南極料理人」
をテアトル新宿にて。
堺雅人主演。 極寒の地南極、ペンギンもアザラシも住まない遥か内地の、富士山よりも標高が高い「ドームふじ基地」。
その極寒の地で、ほっこりあたたかくて、やっぱり厳しく寂しくて、それでもやっぱりあたたかい日々を描く。
レビューで、
男版「かもめ食堂」
と書かれたところもあるが、わたしは「かもめ食堂」をみていない。が、おそらくあっているだろう。
堺雅人、きたろう、生瀬勝久ら、クセもの揃いの役者陣が、存分にクセを活かしてあちこちをあたためる。
伊勢海老を食料庫でみつけた。
皆がそれを聞く度に、
「エビフライでしょ」 「エビフライだよね」
と言い、「いや、刺身とか」と調理担当の堺雅人が反論するも、
「みんな、エビフライの気持ちになってるんだからさ」
と隊長に諭され、テーブルには伊勢海老まるまる一匹のエビフライがそれぞれの前に。
「頭のみそを、タルタルソースにいかしてみました」
ひくにひけず、かぶりつく。
「なんだ。その」 「やっぱり、刺身だったな」
基地のメンバーは男だけの八人。
四百日以上も共に過ごせば、家族のような会話になる。
七時に起こしてっていったじゃない。 起こしたけど起きなかったじゃん。 あ、それ僕のジャージ。 おい、おはよう、ていってんだよ。おはよう、は、どうした。 いいから、ね。 よくないよ、お・は・よ・う 、おいっ。 まま、いいじゃない。
それだけではない。 「超長距離」恋愛だったり単身赴任である。 電話代は、
一分間七百円強。
電話の脇に置かれている砂時計が、いい。
無情にさらさらと流れ落ちてゆく。
そんなだから、失恋もある。
「ちくしょーおぉっ。渋谷とか、いきてぇえぇーっ。ここで死んでやるーっ」
そんななか、隊員たちの唯一の楽しみが、やっぱり食事なのである。
調理担当とはいえ、堺雅人は海上保安庁の調理番であり、専門の料理人ではない。
しかし、ありったけの腕をふるい、皆の笑顔を食卓に生み出すのである。
料理とは、素晴らしい。
美味いものが、欲しくなる。
そんな作品である。
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