今日は、思わぬひとと偶然の再会をはたしてしまったのである。
茗荷谷の拓殖大学にて、朝から試験に参加していたのであるが、午前と昼の部がすみ、午後の部がはじまるまでのふとした休憩時間。
あと三時間。 脳への糖分補給をしなくっちゃ。 ああ、これが終わったら、きっとずどどんと落ち込むんだから、いまのあいだくらい、ぶいぶいさせてよ。 ぶいぶ……い?
見た覚えがある顔のひとが、窓の向こうから手招きしていたのである。
前の前の会社で、わたしがお世話になった、ニキサキさんだった。
ニキさんとは、かれこれ三年半振りの再会であった。
「サキさ……ニキサキさん、たいへんご無沙汰です」
お世話になった方をあだ名で呼ぶ、という失礼をおかしかけたわたしに、「いいよべつに」と不敵な笑みを浮かべる。
香港がうんだ大スター、成龍ことジャッキー・チェンを、寝不足にしてむくませたような、相変わらずの様子のニキさんと、近況報告を交わす。
釘をさしておかねばならない。
なんだよ、まだこの業界でやってるってんなら、うちに戻ってきて俺の仕事を手伝っておくりよ。
いやいや、作図補助のお手伝いで口をすすいでますものですから。めいっぱいなんて、無理でございます。あしからず。
ちっ、なんだよ。惜しかったなぁ。
まことにもって。
ちっ。 じゃあ、頑張って。
いたみいります。
またもやニヤリと、振り返りながら笑みを送りつつ、去っていったのである。
連絡先は変わっていないようなので、後日、結果が出揃ってそうなころに連絡をしてみよう。
缶コーヒーをちびりとやりながら思ったのである。
さあ。
終わった。 いつもの続きに戻れる。
戻れる、がその前に。
しばしの間を設けて、回復期間にあてようと思う。
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