「隙 間」

2009年07月25日(土) 夏の日の恋

男女三人ずつの集団が、前をふさいでいた。
べつに急ぐでもなかったので、そのまま三歩ほど下がったところであとをついていた。

前に男三人、その少し後ろに女三人、そのすぐ後ろに、わたしひとり。

彼らは皆、手で会話をしていた。

男女の距離が、徐々に開いてくる。

前の女子三人の声、いや身振りが大きく、激しくなってゆく。

わたしは手話の心得などない。

男三人は彼女らが遅れてついてきていないことにまったく気づかず、いい気なものでずんずん先を歩いてゆく。

「ねえ。なんかつまんなくない?」
「暑いし疲れたよね。どんどん先に行っちゃうし」
「まあ、そんなこと言わないで」
「てか、さいてーよ。気遣いがないわ」
「まだ気づかないで先を歩いてるよ?」
「疲れたのはわかったから、追いつこ、ね?」
「いいわよ。気づくまでほっときましょ」

わたしは手話の心得など、まったく、ない。
だからこれは、わたしの勝手な想像である。

わたしが彼女らを追い越し、先を歩いていた男らをも追い越そうとしたそのとき。

ようやく男のひとりが気づいて振り返る。

「おおい」

手を振る。
そう。三人とも立ち止まって、彼女らを待ってあげなさいな。

そのまますたすたとまた歩き始めた。

うおぉいっ。

わたしは手の甲で彼らのひとりにツッコミたくなる衝動を、グッとこらえたのである。

カップル不成立は、これで確定だろう、とため息をこぼす。

わたしの勝手な想像、いや妄想であり、本当は彼らはただ学校の同級生で、夏休みに東京ドームに遊びにきただけのことなのかもしれない。





彼らは、彼らと同じようなもの同士としか、好きだの恋だのが、しづらい。

偏見かもしれない。

しかし、大変難しい問題がそれぞれの理由でそれぞれにあるのだが、そうならざるをえない現実が、ある。



僕だって、そりゃあ綺麗な女優さんみたいなコに、ムラムラっとしたりしますわ。
でもね、車椅子で、ひとりじゃ外出もなかなかできないとね。
まさに異星人みたいなもんですよ。

障害者に性欲がないというのは、間違いです。
性から遠ざけるのも、間違いです。
感情をコントロールできないから、と決めつけてしまうのは、彼らの未来にフタをしてしまうことです。

わたしたちだって女なんです。
生理だってあります。
それが何のためにあるのか、本当の理由と意味をきちんと教えてくれないところがあったりもします。

子どもができたらどうするんだ、責任をとれるのか、って、性から遠ざけようとされる親御さんの心配もわかります。
でも、知らないよりも、知っておく必要性に目を向けて欲しいんです。

娘が、どうやらあなたに恋をしているようなんです。本人がそうだと気づかずに、イチバン戸惑っているんですが。
失恋を体験するのも、娘のためです。
知らないところで、知らないうちに、取り返しのつかないことになって欲しくはないですから。



それぞれの立場から、それぞれの本音が聞こえてくる。



そして。



目の前に、普通に、肘をつつきあっていたりも、するのである。


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