「隙 間」

2009年07月19日(日) 夜奇譚と「スジナシ」スジのないドラマ

なにはさておき、

三連休

である。

目が覚めたら、午後がとっくに始まっていたのには、驚いた。

昨夜は、篠原美也子さんのワンマンライヴ、

「独唱」

だった。

平日夜なんてムツカシイ。
いや、行けるかもしれない。
行けるようにしやう。

やはり無理であろう、とチケット予約は見送っていたのである。

今日は早くあがって、しっかり休んで。

シュウゾウ氏のはからいで六時過ぎに出られたのだが、当日券はあるだろうか、いや、それより以前に、確実に落ちる、無理、との判断を下したのであった。

ぐるるぅ。

と虫歯で苦しむライオンのていであった。

虫歯のライオンがうたた寝に見た夢。

どこかのタイトルで使えそうである。

さてそれで昼過ぎに起き出して、ひとまず驚いてみて、なにはさておき神保町の三省堂へ向かう。

不平不満解消には、やはり買い物である。

四冊、ええいままよ、と抱えてレジに並ぶ。

悩んだ。

三巻構成の某長距離作品にするか。

三巻買うなら、別著者を四冊買うのがよかろう、と踏ん切りをつけたのである。

さて夜が更けるまで夢うつつにすっかり溺れ、その帰り道。

言問通りを菊坂下からつらつらと根津に向かって歩いていたのである。

東大の塀沿いに、そろそろ「弥生式土器発見(?)の地」のあたりにさしかかろうとするところで、はたと向こうから、

ゴロゴロ。

とバッグをひいてくる音がした。

顔をあげると、もうすでに、あと三歩くらいのところまで、黒髪の女の子がやってきていた。
肩の下まである黒髪に、眉の下で切り揃えられた前髪の、まるで暖簾の向こうからから伺うような様子でわたしを見つめていた。

ああ、失礼。

と脇に寄って道を開けようとしたのだが、彼女は躊躇することなく、わたしに無言のまま向かってきたのである。

もう一歩、大きく端に避ける。

彼女は目をそらさぬままわたしの横を、ゴロゴロとバッグをひいてすれ違う。

横目に、やはりわたしから目を離さずにいるのを見て取り、はて、誰か知り合いだったか、と足を止める。

しかし、見たところ中学、高校生にはいたらぬくらいの年の子に、わたしの知り合いなどいない。

ふと振り返ってみると、彼女がやはりこちらを振り返りながら、ゴロゴロとバッグをひきながら歩いてゆく。

まだ、わたしを見ている。

内田百ケン先生の世界に迷い込んだような気がした。

まったく見知らぬ女が、いつの間にか当たり前のように隣を歩いていた。
「わたしは知らなくとも、向こうが知っているようならきっとそうなのだろう、とわたしはそのまま並んで歩いていた」

すれ違ったから、そうならなかったのだろう。

坂の下に、赤札堂の灯りが見えていた。

さて。

録画しておいた「スジナシ」という番組を観た。

名古屋のテレビ局、CBCだったと思うが毎週水曜日に、東京では土曜日深夜三時に放送されている。

笑福亭鶴瓶師匠が毎回ゲストを招き、シナリオも事前の打ち合わせ一切なしで即興ドラマを演じ、それを後ほど振り返りながらそれぞれの思惑だったり、戸惑いだったり、感想を語り合う、という番組である。

今回は、元宝塚娘役トップの紺野まひるさんがゲストだった。

めちゃくちゃ、感動した。

そして、笑った。

事前に設定など一切ない。
ただ、舞台が開店時間前の小さな喫茶店である、というだけである。

店の人間なのか、たまたまやってきた客なのか、すべてはぶっつけ本番、一発撮りの勝負である。

ここ何週間か観ているが、やはり純粋な役者さんのほうが、面白い。

監督や演出を手がけたりしている方々だと、何かを考えて、狙って、仕掛けようとして、なかなかうまく流れてゆかない印象がある。

役者は、本能でその役に瞬時になりきって反応を返しているようで、滞る印象が少ないのである。

とくに今回の紺野さんは、

すごい。

鶴瓶師匠が投げるいちいちに、そのすべてを受け止めて、的確に、返す。

突然ふられた喧嘩演技に、もののセリフひとつふたつでポロポロと涙を流し、怒り、開き直り、切り返してゆく。

あっという間に、結婚前に突然問題が起きて大喧嘩を繰り広げる、完璧な、親娘の完成だった。

三十分ノーカットの即興ドラマ。

そしてそのプレビュートーク。

機会ある方は、是非、観てみてもらいたい。


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