「隙 間」

2009年05月21日(木) 猫のごとく忍び歩く

隣の席のササニシキ氏と、ひょんなことからプライベートの話題を交わした。

わたしは氏素性のわからないあやしげな輩ということで振る舞っているのであるが、とうとう堪忍の緒が切れたのか、ニシキ氏の追求の手がそろりそろりと、伸びはじめてきたのである。

谷中に、住んでおります。
ええっ、「谷根千」の谷中っ? いいとこ住んでんじゃんっ。
いえいえ、街はいいとこですが、住まいは茅舎といってよい有り様にしてしまってますので。
私も好きなんだ、あの街。
いいとこ、ですよ。
月一回くらい、じつは行ってるんだよ、私。
……ぎゃふん。

ニシキ氏が、ありがたくも愛してくれている谷中の、いったいどの辺に出没されているのかを遠まわしに尋ねてゆくと、

「だんだん」から見る夕陽もまた王道だけど、好き。
ほほう。
谷中銀座を抜けて、よみせ通りを左に折れた先の、古びた中華屋さんが、またいい。
その手前の「キッチン・マロ」もなかなかあじですよ。マスターが青森の大間出身で、なのに洋食かいっ、て。
なによりいいのは、ギャラリーがあるんですよ。
いろいろ、ありますよね。して、どこでしょう。
猫のギャラリー、知ってる?
(どきっ)
「乱歩゜」て、知ってる?
(どきどきっ)し、知ってます。あすこも、なかなかあじのある名物喫茶店ですよね。
そうそう。その先の、裏のとこにある、「猫町ギャラリー」ていうんだけど。
はうっ。
どうしたの?
……うちの、すぐちきゃく、です。
あそこ、いいんだよっ。本当に「猫好き」による「猫好き」のための「猫好き」がやってるギャラリーでさあ。
毎朝前を通るだけで、なかには入ったことないんです。だって、ただのひとんちの玄関に入ってくみたいじゃあないですか。
そうそう。でも、本っ当に、いいんだよ……。

話題をそらさねば、と。

猫なら、谷中霊園いきゃあしょっちゅうひなたぼっこしてますよね。谷中銀座の「夕焼けだんだん」の猫も定番ですけど。
谷中霊園もいいよね。徳川慶喜のお墓を見に、朝八時に行っちゃったよ。イナムラショウゾウのケーキ土産に買って帰っちゃった。

こ、濃ゆい。

ニシキ氏は、見た目カマキリのように細く、白い。その容貌からはとても想像がつかない。

パティスリー・イナムラショウゾウの店は、寛永寺の裏手のちょっと行った先のところにある。
いつかひとりデザートの手土産を買って帰ろうと思っている。

いつもひとがいっぱいで、なかなか機会がないのが残念である。

ニシキ氏と鉢合わせしないよう細心の注意を払いつつ、休日は路地の軒先をくぐり抜け、這い出さねばならない。

猫の街は、気ままに歩くのが、良い。


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