「隙 間」

2009年04月23日(木) おかみ

 今朝、家元のおかみさんらしき方々が、鶯谷からがちゃがちゃと乗り込んでこられた。

 わたしはその鶯谷で降りた客の後釜に、さっと座ったところだった。

 目の前にはおかみさんたち。

 ひい、ふう、みい、よおがとお。

 数えてみる。

 数えながら、わたしの尻はまだ温まっていない。

 温まっていないのだから、接着剤が溶け出して貼り付いてしまってはいない。

 しかし、わたしひとり起立して座を空け放したとして、ひとりのおかみさんしか座することができない。
 するとおかみさんたちは、どうぞお構いなく、と辞するだろう。
 辞されたところで、起立した時点ですでにわたしのなかはがちゃがちゃしだしている。

 そうなることを見越して善行をはかってみた、と見られないでもないだろう。

 万に一つ、わたしに続いて、居並ぶ紳士淑女ご令嬢の面々が、すっくと立ち、おかみさんたちひと通りの座を空ける、といったことがおこるだろうか。

 それこそ稀有である。
 杞憂である。

 わたしは、煩悶した。

 変わらずおかみさんたちは目の前でがちゃがちゃしている。
 わたしのなかも、はやがちゃがちゃしだしている。

 うえのぉ。
 うえのぉ。

 あら着いたわよ。
 おります、おりまあす。
 あら、ちょっ、はやくはやく。

 ドヤドヤと玉突きあいながら降りてゆかれた。

 山手線のたったひと駅かぎりだったのが、ぐるりとひと回り揺られたかのように思われた。


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