今朝、家元のおかみさんらしき方々が、鶯谷からがちゃがちゃと乗り込んでこられた。
わたしはその鶯谷で降りた客の後釜に、さっと座ったところだった。
目の前にはおかみさんたち。
ひい、ふう、みい、よおがとお。
数えてみる。
数えながら、わたしの尻はまだ温まっていない。
温まっていないのだから、接着剤が溶け出して貼り付いてしまってはいない。
しかし、わたしひとり起立して座を空け放したとして、ひとりのおかみさんしか座することができない。 するとおかみさんたちは、どうぞお構いなく、と辞するだろう。 辞されたところで、起立した時点ですでにわたしのなかはがちゃがちゃしだしている。
そうなることを見越して善行をはかってみた、と見られないでもないだろう。
万に一つ、わたしに続いて、居並ぶ紳士淑女ご令嬢の面々が、すっくと立ち、おかみさんたちひと通りの座を空ける、といったことがおこるだろうか。
それこそ稀有である。 杞憂である。
わたしは、煩悶した。
変わらずおかみさんたちは目の前でがちゃがちゃしている。 わたしのなかも、はやがちゃがちゃしだしている。
うえのぉ。 うえのぉ。
あら着いたわよ。 おります、おりまあす。 あら、ちょっ、はやくはやく。
ドヤドヤと玉突きあいながら降りてゆかれた。
山手線のたったひと駅かぎりだったのが、ぐるりとひと回り揺られたかのように思われた。
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