早朝から大森にゆかなければならなかった。
イ氏のところで血液検査である。
つまりは、血を抜かれるのである。 本来、体内にあって全身をくまなく巡るべきものが、体外に失われてしまうのである。
失われたものは、取り返さねばならない。
外にあるものをもらえないのならば、なんとも思わない。 もとより内にないのだから。
しかし、内にあるものが失われるのは、なんとも嫌な気分になる。
即座に取り返すつもりである。 釣り銭以上に、とことん、である。
この一週間、夜を断肉してきたのである。 牛はもとからであるが、豚も鶏も、である。
白身魚の焼いたのしか、肉の類いは口にしていない。 揚げたのも、もちろん口にしていない。
とくとくと試験管のなかに波立ってゆく有り様をみて、さらに強く思ったのである。
大森の少しばかりの名店で、とんかつをいただいた。 空腹の、完全に空っぽだった胃袋に、である。
しかし、旨かった。 老婦人ふたりで切り盛りしているようであり、あなどってしまいがちであったが、どうしてなかなか。
とんかつは、偉大である。
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