上野の山の裾のを分け入って五條天神社や東照宮へと続く暗い道で、向こうから女のひとが歩いてきた。
夜桜を見上げていた目を道の暗闇に落としたばかりなので、さらにぴゅうぴゅうと吹きつける冷たい風のせいもあって、ぼんやりにじんでいた。
女のひとは、晴れ着姿だった。
気がつくと、いつの間にか見知らぬ老人がわたしの横を歩いていた。
老人がすれ違う晴れ着姿の女のひとを追いかけるように振り向いたので、わたしもつられて振り向いてしまった。
「粋な女だねえ」
しみじみ、つぶやいた。 わたしも、しみじみ、そう思った。
よく見ると、ちらほら晴れ着姿のひとが目につく。
そうか、そんな季節だったんだ。
まあるい白いお月さまが、たおやかに微笑んでいた。
今夜は望月――。
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