「隙 間」

2009年03月10日(火) 「なんとなくな日々」

 川上弘美著「なんとなくな日々」

 川上弘美さんのエッセイ集である。十年近くたってのことである。

「十年ひと昔」とはよくいったものだが、しかしこの言葉、自分で言っておきながら、久しく聞いたことがなかった。

 ひと昔といっても、今や文明科学の発達のおかげをもって、

「一日ひと昔」

 と思うのはわたしだけだろうか。

 そのくせ、その一日を大事にかみしめるように過ごしているわけでもないように思ったりする。

 いつまでも「ひと昔」のまま、いいや、いっそ「ひと昔」の住人にでもなっているかのようなわたしがいる。

 友人のかなたが言っていた。

 五歳児の一年は、五分の一。
 五十歳の一年は、五十分の一。
 だから早さが違って感じる。

 うへえ、なるほど。

 といたく感心してしまった。

 人生はどんどん加速していってしまうのだ。

 なんてこと、おちおちしてられないじゃない、と思いはすれども、「あまのじゃく」なわたしである。

 まっすぐゆけばよいものを、ふらふらと右や左に千鳥足。

 千鳥って、もつれて、素直に転べばよいものを、宙返りなぞしてみせようとしてみる。
 宙返りなぞできるわけもなく、たいそうなすり傷をこさえてしまう。

 じんじん痛むのに、へっちゃらなそぶりをしてみせて、後ろでそっと、身をよじるほど痛がって、じたばたしたりもする。

 強がる、のならよいのだが、それとは違う。

 しかるべきときに強がって、しかるべきときに弱がればよいのだが、その「しかるべき」ときに「しかるべく」することが、なかなかできないのである。

 理由は、自分でもわからない。

「なんとなく」

 なのである。

 わたしも「なんとなく」な日々を、懲りずにこの先、今が「ひと昔」になってしまうころでも、過ごし続けているのかもしれない。

 根本的に「あまのじゃく」なので、保証はできないけれど、なんとなく、そう思う。


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