「隙 間」

2009年02月24日(火) 要検査にうこっけいなり

 健康診断の結果という封書が届いていたので、そうっと、開封してみた。

 判定項目の欄に「A」の文字がずらりと並ぶ。

 ここで明記しておきたいのだが、「A」判定だからといって優れているわけではない。
「標準値」という、ごく当たり前のことを、これ以上だと却ってよろしくないから、ということで「A」という初文字で表しているにすぎない。

 とはいえ、心地よい。

 しかし、いきなりわたしを不愉快な気持ちにさせることが、通信欄に書き殴られていた。

 手書きではないので、実際は他の文字となんら変わりがないのだが、とにかくそのようにわたしには見えた。

「要精密検査」

 脳髄のいちばん奥に、わたし自身が収縮してゆくような感覚になる。
 後ずさってゆくさなか、何か重大な疾患が知らぬ間にわたしを蝕んでいっていたその心当たりの記憶を、内壁に手当たり次第に映し出してゆく。

 しかし解せない。
 いったい「A」判定ばかりのどこに、そんな真っ暗闇の落とし穴が設けられているのか。

 用紙は半折りにされており、どうやらその裏のほうに問題があるらしい。

 やはり「A」が並ぶ。

 突如、「G」という文字が、前置きも自己紹介もなしに現れた。

「G」とは、すなわち「要精密検査」判定を表す。

 ついにみつけたり。

 脳髄のいちばん奥に引き下がっている場合ではない。

 わが宿敵の姿は何なる哉、と目を凝らして見据えてみる。

「コレステロール値」

 ヤツなるかな。
 やはり永遠の、まさに宿敵なり。

 いや、かの心意気に「天晴れ」とたたえよう。

 体重、胴囲、BMI値は、標準値よりやや下回っている。

「あなたの暮らし方で「運動しなさい」は、酷でしょう」

 イ氏との会話が蘇る。

 運動したら食欲が増す。
 満たすと眠くなる。
 眠くなると辛くなる。

 食生活の改善しか残されない。

 その残された中身をのぞき込んでみる。
 納豆に少々の野菜に野菜飲料では物足りぬらしい。

 たしかに、

「ニワトリ襲来!」

 と、唐揚げに竜田揚げに焼き鳥に、と幾度となく掃討戦を繰り広げたこともある。

 思わず、舌が疼く。

 襲い来るニワトリの群れからわたしを守れるのは、わたししかいないのである。

 それは詭弁なり。

 食す量が増えようが、食費がかさもうが、さらなる分解要素を含む食材を食すしかない。

「酵素が足りない体質か、副作用なのかということがあるかもしれないけど」

 イ氏が穏やかに云う。

「ストレスためて不調を招くより、現状でどうしてもというときに薬出して下げてゆくのがベターだよ」

 次回、さっそくイ氏に相談しよう。
 普通の食生活だと思われるのに、いや、空腹気味かもしれないがそれならなおさら、厄介である。

 この食生活が、却って溜め込む体質にしてしまっている、という可能性も否めないのである。

 ならば、食おう。
 食ってやろう。

 減ったら食い、
 満たされるまでは食わず、
 そうしてまた、減ったら……。

 烏骨鶏ならぬ滑稽な鶏頭である。
 すぐに忘れるだろう。

 ちきんと、食生活を振り返ることを忘れぬよう気をつける。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」

 牛とは、最近とんとご無沙汰である……。


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