「隙 間」

2009年02月22日(日) かくていかんぷ

 確定申告である。

 昨年は家賃ほどの還付金をいただいたので、今回もそれをわずかながら期待していた。

 しかし、忘れてはならないことを忘れていた。

 昨年、つまり一昨年はほぼ失業者であったのだから、それだけの還付金になったのである。

 今年は違う。

 医療費控除のみである。
 束になった領収書だけが頼りなのである。

 期待は、しおしおと音をあげてしなびてゆく。

「還付金ていっても一万円くらいじゃん」
「『くらい』っていうけど、お洋服買えるじゃない」

 前に並ぶベビーカーを押す若夫婦である。

「この子のだって、何十着、て買えるんだよ。ありがたいじゃない」

 旦那はへの字に閉口した。

 いかにも。

 若夫婦は上野税務署管内に住まわれているようであり、「何十着」という数字はうなずける。

 にっぽり繊維街もあれば、商店街の小店もあることだろう。

 わたしは、あわよくばとよからぬ企みをしていた自分に、その若奥様の言葉をよおく言い聞かせた。

 わたしも、への字に閉口した。

 しかし、への字のすき間から、ささやかな企みがぷすぷすと漏れ出そうとする。

 漏れ出したものが何なのかは、わたしにも預かり知らないものである。


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