| 2009年02月19日(木) |
「声だけが耳に残る」 |
山崎マキコ著「声だけが耳に残る」
これは、「面白い」といってはならないのかもしれないが、なかなかそれ以外にひと言では表せない。
AC(アダルト・チルドレン)の女性主人公が、同じくACの男友だちとなんやかやとしながら、踏み出せなかった「一歩」を、やがて踏み出せるようになる。
ACとは、おそらく勘違いされている方々が多いと思うのだが、「おとなになりきれない」、「夢見る少年少女」気分のままでおとなになってしまったひとたち、程度だと思われているかもしれない。
そんな「おめでたい」ものではない。
児童虐待、薬物アルコール依存症などの直接の被害者であったり、または関係に巻き込まれ、精神的肉体的にシェルターに逃げ込まざるを得なかった、傷つけられてしまったひとたちを総じて「AC(アダルト・チルドレン)」としている。
主人公のシイガイが、歯に衣着せぬ強烈な女性感情、ではなく、生の彼女の感情をぶちまけ続ける。
理不尽さは微塵も感じない。 いっそ清々しさを覚える。
しかし、それだけではなく、きちんと彼女はACである自分と、同じACの男友だちと、「一歩」を踏み出すように、あがいてゆく。
深刻な問題と向き合っているはずなのに、それを感じさせない勢いとテンポと緊張感で、ぐいぐい引っ張られてゆく。
思わず吹き出してしまう数々の場面は、常に崖っぷちの綱渡りを紛らわせているだけにしかすぎず、綱のあちらかこちらか、確信犯的にそっちか、と忙しい。
感動でもなく。 勉強でもなく。 娯楽でもなく。
読んでみてよかったと思えた。
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