上野の西郷どんの、それよりももう少し手前の入口のとこ――。
わたしは、自分の吐く息がどれくらい白いのか、「は」の口を夜空に向けてみた。
灰がかった空に、灰色の雲がまだらをなしていて、薄ら寒さが増したような気がした。
思うほどあたたかくないわたしの吐いた息は、無色透明だった。
だけど、そんなものよりも、わたしはすっかり目を奪われてしまっていた。
――一本の桜に。
春はまだまだ近からず、花びらがようやく、顔をのぞかようとしだした開きかけのつぼみが、千々に震えている。
つぼみたちが、りりり、とさんざめく。
一瞬、だった。 いや、一寸、だったのかもしれない。
カッコウ、カッコウ――。
雑踏のなかの、エア・ポケットに、落ち込んでいたかのように、急にざわめきやにぎわいや、喧騒があたりに流れ出す。
わたしは、とてつもなく、老婆になった気がした。
そうして――。
また千々のつぼみたちを見送り続けるのだ。
ただひたすらに、ひたすらに。
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