「隙 間」

2009年02月17日(火) 夜桜のつぼみ

 上野の西郷どんの、それよりももう少し手前の入口のとこ――。

 わたしは、自分の吐く息がどれくらい白いのか、「は」の口を夜空に向けてみた。

 灰がかった空に、灰色の雲がまだらをなしていて、薄ら寒さが増したような気がした。

 思うほどあたたかくないわたしの吐いた息は、無色透明だった。

 だけど、そんなものよりも、わたしはすっかり目を奪われてしまっていた。

 ――一本の桜に。

 春はまだまだ近からず、花びらがようやく、顔をのぞかようとしだした開きかけのつぼみが、千々に震えている。

 つぼみたちが、りりり、とさんざめく。

 一瞬、だった。
 いや、一寸、だったのかもしれない。

 カッコウ、カッコウ――。

 雑踏のなかの、エア・ポケットに、落ち込んでいたかのように、急にざわめきやにぎわいや、喧騒があたりに流れ出す。

 わたしは、とてつもなく、老婆になった気がした。

 そうして――。

 また千々のつぼみたちを見送り続けるのだ。

 ただひたすらに、ひたすらに。


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