望月の昨夜、いつも何の番組を観ていたのだっけ、とわからなくなり、人差し指のおもむくままにテレビのリモコンのボタンを押した。
彼女が、立っていた。
そして、それはけして顔がわかるほど大きく映し出していたわけでもないのに、わたしはリモコンを置き、懐かしむ目で、画面の彼女を見つめていた。
石野田奈津代。
篠原美也子を追いかけていた東京百歌で知った、アーティスト。
メジャーからインディーズになっても、ずっと歌い続けていた。 TOKYO MXの「ガリンペイロ」というインディーズ・アーティスト達をランキングする歌番組で、「オリオン」を歌っている彼女を、やはり偶然見つけ、胸の奥が震えた。
彼女は今、全国に向けて歌っている。
たったひと組、たった一曲だけしか、紹介する枠がない番組の、そのひとりとして、歌を歌っていた。
好きで好きでいつも追いかけていて、ということはないのに。
忘れそうなとき、忘れたふりをしようとしているとき。
彼女の歌を歌う姿を、見させられる。
春の空が、やがて花を待つ地へ、やってくる。 種を蒔かねば、芽は出ない。 だから、花も咲かない。
真っ白な畑の畝に、黒い種を蒔いてゆこう。 実がならなくても、 花が咲かなくても、 馬鹿のひとつ覚えだとしても、 朽ちてゆくばかりでも、 それらはやがて堆肥になる。
十六夜に、思う。
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