さて朝、目覚める。
部屋の都合上、わたしの足元のほうでTの字の形で友が寝ている。
ごそごそと彼が起き、だからといってわたしも起きなければ、という気持ちはあったが、そうはいかない。
しかし、わたしの携帯が目覚ましの振動をあげはじめた。
起きぬわけにはいかない。
テレビをつけ、TBSに合わせる。番組最初のブックコーナーに間に合った。 そうして気がつくと昼になり、食事と買い物をしに出かける。
友はその足で帰るため、大荷物をしかと肩から下げている。
買い物というのも、友がパソコン関係の機器を購入したいとのことだったので、我が家がある谷中から秋葉原まで向かうことにした。
我が家から秋葉原にゆく場合、まず日暮里駅に歩いてゆくのと、上野、御徒町駅に歩いてゆくのは、五分程度しか変わらない。 御徒町からはすぐ秋葉原のビルが見える。
であれば、歩いてゆこう。
ということにした。
重い大荷物を、友は肩から下げたままである。
「駅の階段を上り下りするのを考えれば」
ありがたい言葉をもらい、背を押してもらった。 押されずとも勝手に歩いてゆくのだが、やはりありがたいのは心強さをもらえる。
森鴎外住居跡を、塀の隙間から、ちらとのぞける道を回り、上野から秋葉原へとぬける。
途中トイレに寄った際、その間に荷物を持つくらいの、ささやかすぎるくらいの手助けはさせてもらった。
そうして秋葉原の某量販店にて品物を物色し、会計時にわたしのカードを使ってもらった。
支払いは友自身のカードだが、付録をわたしのカードにつけてもらうという、厚かましい願いを聞いてもらったわけである。
しかし、一緒にいるとつい、こちらも買い物をしたくなる。
会計の列に並ぶその直前までいってしまったが、なんとか思い直すことができた。
危うかった。 列が長蛇でなかったならどうなっていたかは、容易に想像ができる。
せっかく友につけてもらった付録は、大切に有意義に、使わせてもらおうと思う。
そうして友は、そのまま、愛する妻子が待つ家へと、急ぎ足で改札を抜けていった。
急ぎ足で帰りたくなる家がある友の背中は、小躍りするように、じれったさに急かされるように小刻みに揺れていた。
その背中が他の背中に紛れて見えなくなると、わたしはようやく、名も無きただの背中のひとつになってゆく。
名も無きものが名を持てる。
友は、よいものである。
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