「隙 間」

2008年12月07日(日) 「なぎさの媚薬7 ラスト・スマイル」

 重松清著「なぎさの媚薬7 ラスト・スマイル」

 ちょっとだけ、のつもりが、止まらずにひと息に読んでしまいました。

 伝説の街娼なぎさ。
 彼女に出会えるのは、彼女が選んだ者だけ。
 深い絶望や悲しみを背負った者。
 彼女はその者を過去へといざなう。やり直したい、取り返しのつかない現在へ至ってしまった分岐点に。
 しかし、その者自身の現在は、何ひとつ、変わらない。

 変えられるのは、取り返したいと願う、相手の現在だけ……。

 徐々になぎさの正体があかされてきました。
 残り数冊で完結、です。

 今回の主人公は中年のフリーライター。
 小説家になる、といいながらも、結婚し、娘が生まれ、生活のためにとライター稼業でゴシップ記事を書いてなんとか暮らし、小説を書き上げることもないままの日々。
 生まれたばかりの娘は超未熟児で入院費用が相当に必要だった。
 ゴシップ記事の延長で、ゴーストライターとして暴露本を書き、それが元で、アイドルを自殺に追い込んでしまい、小説を書くどころか、すべてが狂ってしまう。
「お前のせいで」と幼い娘に、妻に、あたり、離婚し、連絡ひとつ、とれなくなってしまう。

 なぎさの正体を追いかけるなか、ホテルで観たアダルトビデオのなかに、娘を見つける。

 しかし娘は数年前に、撮影のトラブルから自殺してしまっていた。

 あなたは、逃げてばかりいた。だから、遠回りして、見なくてはならない過去を寄り道しなくてはならなかったの。

 なぎさに導かれ、男は、まさに娘がその作品の撮影ロケに向かおうとするところでホームレスとして出会い、撮影のエキストラとして拉致されて、一緒に連れてゆかれてしまう。

 父親だといえない男。
 父親だとしらない娘。

 娘が、社会的な賞をもらえる女優となった現在、記者会見の場で男は、父親は記者として、質問を投げかける。

 もし、ここにいるのだとしたら、父親になにかひと言、ありますか?

 許さない、だけど、ありがとう、です……。

 男が父親だとわかったのかわからない。
 だけど深く頭を下げた彼女の目には、涙がこぼれていた……。

 作中、身につまされる言葉が、ありました。

「勝負を投げないことと、負けを認めないことは、似ているようで違う。夢を持つことと、夢を見ることも、違う」

「ぬるま湯に浸かるということは、長く浸かっても温まらない、あがっても風邪をひくという、どうにもならないこと」

 夢を見ながら、ぬるま湯に浸かっているのかもしれません。

 誰かの、何かのせいにしている日々だけは、できる限り、ないようにしたいものです。

 だけど、生活できてこそ、というものがあったりするわけだけれど……。


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