夢見る汗牛充棟
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2008年11月20日(木) |
優雅なハリネズミ ミュリエル・バルベリ |
河村真紀子:訳 早川書房
なんとなく購入。読了。
美しく調子のよいきれいな文章で読みやすかった。 読みやすさは文章自体。
読みながら感じていたのは、冷たさやいやらしさ。 冷静な知的な文章で品もあって、でも読みながらずっと 嫌だなと思っていました。
この本を手に取り頁をめくる時に、まぁ大人の読み手は アパルトマン管理人に、(子供の読み手は少女にかな) 共感しながら読むように思う。
容姿は普通、学があって、書や芸術に親しみ、学問への理解も深い。 こんな私が社会的地位も低くアパルトマンの管理人を務めながら 社会的地位の高い住人達から、外面に現れる特徴のみで愚鈍な存在 として扱われる。 その内面には輝く光があるのに誰もそれに気づかない。私も気づいて もらおうとは思わない。 それなのに、ある時その内面の光に目を留める者が現れる――――。
ほら、こんな私をあなたは知っているでしょ? この「私」はあなたではなくて? と甘い声で耳元をくすぐるような 嫌らしさがあって、個人的には苦手だった。 自分の内側には宝石があって輝いていて、それを他人は 理解しないと思いたい心理をうまく利用されているようで心地よくない。
「私」は金持ちは貧乏人には考える頭がないと思っている。 と批判しながら、同時に 自分自身が路上生活者には気高い心がないと思っていたりする。
この辺の私の心理は面白かった。
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