夢見る汗牛充棟
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2000年02月07日(月) 途の向こう

「道の向こう」




あなたは

七時四十分に家を出る

同じ道を自転車で走り

同じ時間に会社へ至る



それを一月繰り返し

それを一年継続した



知らなかったが

誰もがするように

あなたも戦っていたのだね



あなたは

七時四十分に家を出る

同じ道を自転車で走り

曲がり角で自分を試す



その道を曲がらなくてもいいのに

その場所を目指さなくてもいいのに



それを二年繰り返し

それを五年耐え抜いた



あなたが七時四十分に家を出た後

「欠勤ですか」と電話を受けた



どうだった?

案外簡単なことだっただろうか

道なんかいつ変えたっていい

「お稲荷さんの大樹に誘われたから」

六年目にあなたは呟いた



行き先を決めるのは自分の足

約束に絡まるのは自分の意思

毎日通る稲荷の大樹に問いかけていた

あなたは今日行かなくていいと知った

大樹は風にざわめいていただけだろうが

あなたの耳は答えを聞いた



あなたはもうじきに

ここに帰らなくてよいことも

知るのだろう









(2002.11.17)


恵 |MAIL