夢見る汗牛充棟
DiaryINDEX|past|will
「移ろいと忘却」
いつも雨だと思っていても
いつのまにか雨でない日が増えて
いつか空は曖昧を失って
鮮やかな夏の色になる
いつも自転車で通る道端の紫陽花は
いつか かさりと色褪せている
忙しい時間をじたばたする私は
それを目の端に捉えながら
通りすがりに少しだけ胸が痛い
曇りがちだと少し憂鬱だった日々
ひとの心は他愛もないし
それは 梅雨だから仕方のないこと
けれど物静かな雨にさようならして
これからしばらくぎらぎらした夏なのだし
そんな鮮やかさに炙られて
薄暗い灰色はちいさくほそくなってゆくばかり
その日
わたしは 空を見ただけで
浮き立つような気持ちになった
ごめんなさい
あたしは 大きな画用紙いっぱいに
紫陽花が描きたいと思った
|