夢見る汗牛充棟
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2000年01月06日(木) うたまとめ 6

[76] 非現実的な日没   2003/12/21(日) 16:48:27

猫と突風の混じりけ
砂埃と敷石と鈍い海と
天の鼓動
透明がすぎている
ガラスの青灰色を
ギザギザに切る黒い山
ぐるり見まわせば
人形劇の円形舞台
名残の色ともしびめぐる
一枚の童画
鈍色外套に帽子の男が
立てた鞄の横で
小さな笛を吹くと
ぴょるるるると
船着場に流れる調べを
林立するヨットのポールが
銀色に照りかえす
その先端に猫の瞳のように
ひときわに輝く星
天使のような夜の訪れ



[77] 一息   2003/12/27(土) 21:25:14

生活と生活の破れ目から
あおい空を思い出すように
忙しなく息を切らせたあげく
ふと 立ち止まったとき
いつも眼の前に並べられながら
見ようともしないものたちが
かようにうつくしいのだと
気づいてしまうことを
すこしだけ惜しく思う
空気のようなものたちが
いかに愛しいかを知るときも



[79] 平穏な喉の痛み  2004/01/03(土) 01:30:02

吼えて 吼えて 吼えて
声が空に食べられて
苦笑をする やすらかさ

怒り 怒り 怒り
がらんどうに失せるばかり
声枯れした子の しずけさ



[80]     2004/01/06(火) 21:05:47

メールはいい
便箋よりもペンよりも
エンピツよりも
ずっといい
言葉を選ぶのに
これほど心揺れたことや
二枚目に染んだ筆圧や
あらわれなかった言葉
余韻も心地もきみには
絶対伝わらないでいいから
メールがいい
さびしいけれど
それでいい



[81] おかしなの  2004/01/08(木) 23:55:22

へこんでいた昨夜は
石蹴る自分の爪先と
凸凹に陰影の帰りの道
でも今日は空向いて
まんまるの月見て歩く



[82] いくさのきみ   2004/01/24(土) 20:57:07

ごおうごおうと
君が吼えた

砂塵にけぶる視界で
木々が大きくしならせ
甲高い雄たけびを上げ
おしよせる軍勢

軍旗のように高々と
枯葉を振りたてて



はしる  2004/01/28(水) 23:39:07

ひゅひゅと
かぜをきって
ほっぺたつめた
じゃぶぶと
かぜがなぶる
耳たぶいたた
はなのきいろ
抹茶色の小鳥
はなの紅
きいろい猫のあくび
視界を彩るいろいろ
ながれ りんりんと
かぜにはしる
こころあったか



[84] 無題  2004/02/08(日) 18:32:26

あい ある あす 或いは あかり 
命も意味も遺棄し息する怒りが居て
うたは移ろう空ろ現も嘘も洞に渦まく
永遠に描きえぬ詠じえぬX得難きエエテル求め
鬼は檻に居り 朧な音を織り 懊悩は重たき澱のごと




[85] 砂になるまで  2004/02/22(日) 16:13:4

のぞみ路傍の石になれ
辛抱強く地べたに在れ
灰色でいい灰色でいい
誰の土踏まずも
傷つけちゃいけない
たくさんの雨粒に洗われ
まろくまろい石になれ
砂になるまで
砂になるまで




無題 2004/03/08(月) 21:13:38

さびしがるのは

それはことばたち

美しいものに触れたいと

井戸の奥そこで溜る原形質や

生まれたいと願う繊細な泡たち

優しく連ねてみようと

うつくしく重ねてみようと

思い出したように苛む

試行錯誤のなかで

彼らは何一つ

不満をもらさないけれど

はなから手に持たないものを

あらわそうとする虚偽を

赦してくれながら

裏面で静かにさびしがる

おしころしたすすり泣きが

ときにはわたしの胸を

すこうし痛ませる


恵 |MAIL