夢見る汗牛充棟
DiaryINDEXpastwill


2000年01月04日(火) うたまとめ 4

悔  2003/04/27(日) 22:21:24

たった一通でなく
手紙を書けばよかった
届かないなどと
怖れることはなかった
何のための言葉なのか



夢  2003/05/02(金) 21:06:16

境界を越えて
あおい丘の家を訪ね
とぼとぼと歩いていく
屋根も壁も庭石も砂利も
植木も下草も苔も
郵便受けも
あおい硝子で造られて
どこもかしこも閉じている
何度も扉を叩いて呼ぶ声は
すべてあおにのまれてゆく
帰ろうかと哀しく思うころ
いつも主は扉を開く
「溺れそうなあおで呼び鈴が
聞こえない」
一つきりの椅子を勧め
主は床に腰下ろす
「またあおさがましましたね」
私は世間話のように
口にする



恋歌  2003/05/04(日) 19:38:42

潰れた喉で君を呼びます
どうせ君には届かぬ言葉
空気が漏れる細い笛の音
寂しい寂しい調べを奏で
私の喉は壊れた笛で
君が塞ぐを待つのです

潰れた喉で君を呼びます
架空の狭間に封じる言葉
穴から漏れるのぞみといき
偽り空の調べを奏で
私の喉は壊れた笛で
指先絡まる夢など見ない




あめのひ  2003/08/03(日) 19:22:26

あめのひ とほとほ
おとなるせかい
つちぬれ ひとかぜ
すべる はきもの

かわらをといをつたってゆくよ

どろはね とぽとぽ
ほはばにあわせ
かさはね ふるみず
つらなるは みち

青空さがしにほたほたあるく



羨望  2003/08/09(土) 22:02:14

あなたは
眼にせいれいをすませている
足には地をすませ
もくもくと手は土を掻く
何より素朴な生活の
漏れ出してくる音の調べ
羨む気持ちがわかるだろうか
あなたは 捻り出さない
詩というものを

私は呻吟する
すぐにうろたえ破綻する
舗装道路上の構築物を
尤も それは曰く詩のようだ


あなたは いきる
うたと いのりと
その 厳しさと優しさと
眼にせいれいをすませている



八月の道端  2003/08/14(木) 15:05:04

日陰の朝顔
からまるはいあがる
竹ざおと蝉とまろい花
ぽかりとした穴の奥のあい

粘こい空気の中を
捩れながら泳ぐ
時間に追われる蝉を
ねこが咥える

あおみどり
雨のあとゆだりながら
もえる下草は
ゆらゆらふるえ

匂いに溺れ
そらのガラスを醒めた眼で
両腕ごしにながめやり
おかしな陽気だと呟いて
ひとは黙々と草を刈る



[61] 晴れ  2003/08/20(水) 16:46:02

蜂蜜とろとろ
流れるひかり
ぐるぐるまわった
バターになって
ながなが伸びてる
ねこさんの
丸いおめめも
きんいろの日



[62] 高い空  2003/09/11(木) 20:30:53

切れ切れの雲と空のあお
背丈ほどのすすきがゆれる
うつくしい昼と夜
風がきてはさらっていく
この今日の熱ほど
名残惜しいものはないけれど



無題 2003/09/25(木) 20:26:37

ひとふで
えがいてはぬり
日々とかさねれば
そらはえもいわれぬ
風合いににじみ
しきりに想像をかきたてる

ひとは無垢なひろがりに
心象風景を写しながら
おののく身体を
じっと見つめている

一喜一憂を
笑うのかもしれず
一喜一憂を
愛しむのかもしれず
そらは気まぐれな
占いのように
今日もここにある



[64] 町の中で  2003/09/29

歩道橋を歩く大人が
空を飛んでいるようだった
儚いものをねだる子供は
大急ぎで階段を上ったけれど
行き交う車を見下ろしながら
アスファルトにくっついている靴底が
空はとても遠いと囁いた




わたしたち   2003/10/04(土)

たぶん
つぶつぶは
晴れが嬉しいみたい
どこがだろ?
あおいそらが
気持ちいいみたい
どれがだろ?
ちょっとした
水気の多い少ないに
うきうきと
わたしを歌わせるの
おまえたち
どして?



無題  2003/10/04(土)

そらが透きとおり
目に映る山はあおくあおい
うつろうようにうつろい
この道を歩く鼻をくすぐる
今日の金木犀の甘さ
むせるような濃緑は
肩越しのおぼろ
遠ざかる妙



無題  2003/11/14(金) 01:17:51

混沌のひとかたまりになれないわたしは

時にはもどかしいけれど

ちゃんと形を損なわないで

受け取れるといいなと思うのです




[69] 思へば   2003/11/15(土) 19:31:18

曇天の深さかなしむ
あなたを濡らす 滴かなしむ

見えぬ無尽の塵を抱きて
ついにしたたる
その音すらも 雨だと笑ふ

夕べの声のその小さきを


恵 |MAIL