Leonna's Anahori Journal
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きのう、通夜。 昨夜は私とキンちゃん、妹夫婦と娘の梨紗の五人で泊まり込み、夜通し線香を絶やさぬよう交替で母についていた。
棺の顔のところの窓からのぞくと、母は相変わらず眠っているように見える。窓には透明なプラスチックのようなものがはまっていて、顔を近づけたひとの影(輪郭や髪)がかすかに映る。私が顔を近づけるたびに母の瞼のうえで私の髪の影がうごくので、そのたびに母が目を覚ましたのかと思いドキリとした。
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きょう。昼から、告別式。お坊さんの読経の最中、一回だけ「がぁぁぁぁーーーつ!」と、もの凄く大きな声をだされた箇所があった。列席した誰もが一瞬ビクッとするような大きな声。私は「ああ、この声で起きてこないようでは、お母さん、本当に旅立ったのだな」と妙な納得の仕方をした。あとから、あの声は、引導を渡すときのものだと教えられた。
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火葬が済んで骨をひろうとき、妹が「陽子お義母さんのときと全然違う」と言って泣き出した。長く患い、ほとんど寝たきりで大量の薬を摂取し続けた母のお骨は、数年前に亡くなった義母のお弔いのときを思い出すと、泣きたくなるくらい脆く、はかなげに見えたのだろう。
私には“普通のお骨”がどんなものかがわからない。ただ、目の前のお骨が“母”だとはとても思えなかった。母はお骨になったのではなくて、起きあがって、どこかへ歩き去ってしまったのではないか?。何も残さずに黙っていなくなるわけにもいかないから、「じゃ、私、行きますから」という代わりに、こんなものを置いて行ったのだ。…そんなふうに考えると、すんなり納得することができた。
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唐突に、尾辻克彦(赤瀬川原平)の芥川賞受賞作、『父が消えた』のタイトルが思い浮かぶ。読んだことはないけれど、その小説はもしかしたら父親を亡くした経験を書いたものではないのか…
いずれにしても、私と妹の母は消えてしまった。もう、二度と会えない。
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