群馬で会社を辞めてから、今までずっと沈んだ気持ちが続いていた。 理由はわからなかった。 それを、おいらはいろんなことに原因を求めてみた。 仕事が自分の裁量でできない。 初めての職場で戸惑っている。 などなど……。
でも、そうじゃなかったのが、一人のガス馬車御者との話で見えてきた。 彼は、かつて年商180億の会社の社長だったこともあり、小説家であり、俳人でもある多彩な人。
きっかけは、その人がおいらに「どうだい? 今の会社に慣れてきたかい?」と声をかけてくれたのが最初だった。 そのときは、おいらは「みんなよくしてくれてるから慣れてきました」という一種教科書的な答えをしていた。 ところが、彼は以前からのちょっとしたおいらとの会話に対して、会社員向けじゃない、と思っていたらしい。 普通の管理職とは違うと思っていたようだ。 おいらからすれば、ガス馬車御者経験者だもん、違うのは当たり前、と思っていたのだが、向こうはそうだとはおもっていなかったようだ。 彼とは、たまに子供の教育論とかでちょっと話をしたこともあったが、そういうところから、おいらの本質を見抜いていたらしい。
やりたいことがほかにあるね?
この言葉が痛く突き刺さった。 小説家は、諦めたわけではなかったが、しばらくは封印。 そう思っていた。 そして、群馬にいて仕事をしている間は何も感じなかった。 けれど、今少し時間ができて、感じていたもやもやは、やっぱり原稿に迎えなかったからなんだな、と思った。 話してみて、やはり書きたい。 そう思った。 もちろん、書けばいいのだが、本当に魂をこめて書くと、一日一行がやっと。 その話を聞いて、何か安心した。 書きたい気持ちがあって、書けない。 ⇒ 書く力がない。 そう思い込み、今のかけない状況に自分で止めを刺し、そのままかなたに追いやろうとしていたのだ。 そして、そのためにかける環境を廃し、サラリーマン一本でやっていこう。 そう思い込んでいた。
自分のペースで書こう。 そんな当たり前のことに納得するまでに、おいらは三年もかかった。 まだ商業ベースじゃないのだ。 自分のペースで書けばいい。
ただその当たり前のことをその会話で気づかされた。
別段生活を変えるわけじゃない。 けれど、向かい合ってもいい、という風に気づいたとき、何かがすっと楽になった気がした。
今日は泊まり。 その人に借りた自作の小説(自費出版か、あるいは限定発売か)のコピーモノを読ませてもらう予定。
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